2020 Fiscal Year Research-status Report
ゲノム複製の停止と再開に関連したTLS機構とクロマチン構造変換のクロストーク
Project/Area Number |
20K12163
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
横井 雅幸 神戸大学, バイオシグナル総合研究センター, 准教授 (00322701)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | DNA損傷トレランス / 損傷乗り越え合成 / クロマチン構造変換因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
【ヒトTLS因子の翻訳後修飾に関わる因子の探索と解析】ヒトの損傷乗り越え合成(TLS)における主要なDNAポリメラーゼであるDNAポリメラーゼ・イータ(POLH)は、TLSの過程でユビキチン化される。ポリユビキチン化は速やかなタンパク質分解に導き、C末端部位でのモノユビキチン化はTLSの制御に関与すると考えられている。当該年度では、脱ユビキチン化酵素であるUSP11およびUSP34と相互作用することを見出し、USP11とは直接結合することを組換えタンパク質を用いた実験で明らかにした。また、USP34との相互作用の意義を明らかにする目的で、USP34のノックダウンが、細胞の紫外線感受性やPOLHの安定性に及ぼす影響を検討している。 【TLS反応に関与するクロマチン構造変換因子の解析】当該年度の実績として、S期の細胞におけるDNA損傷部位へのPOLHのリクルートに関わることが示唆される3つのクロマチン構造変換関連因子について、ノックダウンによる影響を解析した。その結果、POLHの損傷部位へのリクルートに重要なPCNAのモノユビキチン化に関わるクロマチン構造変換因子を新たに見出した。またこの関与は、シスプラチンと紫外線でも同様に確認されたことから、損傷の種類に依らないことが示唆された。 【TLS反応を特異的に阻害する化合物の探索】当該年度は、POLHをはじめとする12種類のDNAポリメラーゼに対して、in vitroでのDNA伸長活性に対する阻害効果を調べた。これにより、各DNAポリメラーゼに対する化合物の特異性に関する知見を深めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究目標として掲げたテーマには全て着手したが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあって、研究の進捗が当初の予定より遅れた。特に、TLS因子をユビキチン化するE3リガーゼのスクリーニングで候補因子の同定が進んでいない。その理由として、スクリーニングに用いたSplit-GFPシステムの感度が不十分である可能性があるが、その検証が十分にできていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
TLSに関わるクロマチン構造変換関連因子の解析で新たな進展があったことから、当初の予定通り、多光子励起生細胞イメージング による解析を開始する予定である。また、TLS因子をユビキチン化するE3リガーゼのスクリーニングでは、Split-GFPシステムの感度増大を目指した発現ベクター系の見直しを行う。TLS反応を特異的に阻害する化合物の探索では、in vitroの解析結果を踏まえ、細胞のDNA障害剤に対する感受性解析を進めていく。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大により、研究室での活動が制限されて研究室運営が滞るなどしたことで、当初計画より研究の進捗に遅れが生じた。これにより、消耗品等の物品購入の規模が当初の見込みより小さくなったことが次年度使用額が生じた主な理由である。なお、当該年度末からは、研究活動もほぼ平常化した。このことから、次年度使用額は進捗に遅れが生じた研究を推進するために翌年度に使用し、翌年度分の請求額は概ね順調に進展している研究に使用する予定である。
|
Research Products
(1 results)