2021 Fiscal Year Research-status Report
ゲノム複製の停止と再開に関連したTLS機構とクロマチン構造変換のクロストーク
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20K12163
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
横井 雅幸 神戸大学, バイオシグナル総合研究センター, 准教授 (00322701)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | DNA複製 / DNA損傷 / 損傷乗り越えDNA合成 / translesion synthesis / クロマチン構造変換 / 低分子化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
【ヒトTLS因子の翻訳後修飾に関わる因子の探索と解析】ヒト損傷乗り越えDNA合成(TLS)関連因子のユビキチン化・脱ユビキチン化は、TLS機構の制御において重要である。TLSで主要な働きを担うDNAポリメラーゼ・イータ(POLH)のユビキチン化を担うE3ユビキチンリガーゼ(E3)を探索するため、288種類のRINGフィンガー型E3との試験管内相互作用の強さをもとに、上位10種類の候補因子を選定した。発現抑制による内在性POLHの安定性を紫外線照射の有無で比較したところ、紫外線未照射時の分解への関与が示唆されたE3を4種類、照射時の分解への関与が示唆されたE3を2種類、新規に同定した。 【TLS反応に関与するクロマチン構造変換因子の解析】POLHのDNA損傷部位へのリクルートに関わる可能性が示唆されたクロマチン構造変換因子のうち、SMARCAD1を発現抑制したS期同調細胞の核に局所紫外線を照射してPOLHの挙動を調べた結果、効率的なPOLHのリクルートが有意に低下した。同様なPOLHのリクルートの有意な低下は、CHD9の発現抑制でも確認された。 【TLS反応を特異的に阻害する化合物の探索】12種類のDNAポリメラーゼのDNA合成活性に対する特異性解析の結果をもとに、POLHに対する特異性が比較的高いと判断した4種類の低分子化合物について基質DNAとの親和性を解析した。その結果、3種類がDNA結合を阻害し、1種類はDNA結合に影響しなかった。DNA結合を阻害した3種類について酵素反応速度論的解析を行なった結果、その阻害様式として、2種類は競合的作用し、1種類は非競合的に作用することを明らかにした。さらに、DNA結合に影響しなかった1種類について、酵素反応速度論的解析によりヌクレオチドの取り込みから重合までの過程を調べた結果、その阻害様式が競合的であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目標として掲げた全てのテーマが順調に進展した。特に、昨年度まにスクリーニング系の確立で足踏みをしていたPOLHのユビキチン化に関わることが期待されるE3リガーゼの探索において新規候補を複数見出すことができたこと、POLHのDNA合成活性に阻害作用を及ぼす低分子化合物の作用機序と阻害様式について具体的なモデルを提唱できた点が挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
【ヒトTLS因子の翻訳後修飾に関わる因子の探索と解析】今年度に新たに同定したRING型E3について、POLHのユビキチン化を介した分解への関与についてより詳細な解析を行い、POLHと相互作用する脱ユビキチン化酵素USP11とUSP34の単独発現抑制および二重発現抑制が細胞の紫外線感受性に与える影響等を解析する。これにより、POLHの関わるTLSにおいて、POLHのユビキチン化・脱ユビキチン化の調節がTLS機構に与える影響を明らかにする。 【TLS反応に関与するクロマチン構造変換因子の解析】今年度に示した、POLHの損傷部位へのリクルートにおけるSMARCAD1とCHD9の働きについて、クロマチン関連因子の発現抑制時のPCNAのモノユビキチン化に与える影響、それらのATPase活性の必要性を明らかにすることを解析して、POLHの損傷部位へのリクルート機構を明らかにする。 【TLS反応を特異的に阻害する化合物の探索】今年度のin vitroの解析結果を踏まえて、細胞のDNA障害剤に対する感受性解析と局所紫外線照射を行う。POLHのDNA合成を阻害する低分子化合物がTLSに及ぼす効果と特にPOLH過剰発現細胞に対してシスプラチンと併用した際の細胞の感受性を解析し、POLH高発現がん細胞の治療に有効な薬剤の開発に向けた基礎的知見の収集を目指す。
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Causes of Carryover |
今年度の予算執行はおおむね順調であったが、年度途中で消耗品の一部を従来品より安価な製品に置き換えた結果、必要十分な量を購入したものの若干の残額が生じた。繰越した金額は研究計画で購入している消耗品単体の平均金額に比べても少額であるため、次年度に請求する助成金と合わせても使用計画に特段の影響は及ぼさないと判断できる。従って、次年度の助成金の使用計画では、特に変更を加えることはしない。
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Research Products
(3 results)