2022 Fiscal Year Research-status Report
放射光円二色性分光を用いたDNA損傷修復過程におけるクロマチン構造変化過程の解明
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20K12164
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Research Institution | National Institutes for Quantum Science and Technology |
Principal Investigator |
泉 雄大 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学研究所, 主任研究員 (20595772)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | DNA損傷応答 / クロマチン / ヒストン / 円二色性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、DNA損傷に誘起されるクロマチンの構造変化を放射光円二色性分光により観測することを目的としている。令和4年度はDNA非損傷のヒトがん細胞から抽出したクロマチンの構造を調べるために、二次構造分布を反映する円二色性スペクトル測定を行った。その結果、α-ヘリックス構造が主要な二次構造であることを示す円二色性スペクトルが観測された。令和5年度は、DNA損傷を与えた細胞由来のクロマチンについても同様の測定を行い、その構造解析と非損傷細胞由来のものとの比較を行う予定である。また、DNA損傷導入後から抽出までの時間を変えながら構造の時間変化を追跡する予定である。 上記の実験と並行して、クロマチンを構成するヒストンタンパク質H2A-H2Bを対象として、細胞への熱ストレスがその構造に与える影響についても円二色性スペクトル測定により調査した。その結果、(1) DNA損傷量が有意に増加した加熱直後の細胞から抽出したH2A-H2Bは非加熱細胞由来とも試験管内でH2A-H2Bを直接加熱した場合とも異なる構造を形成していること、(2) 細胞加熱後、十分時間が経過し、DNA損傷量が非加熱細胞と同程度になった段階で抽出したH2A-H2Bの構造は非加熱細胞由来のそれと誤差範囲で一致することを明らかにした。これらの結果は、細胞が熱ストレスに応答してヒストンの構造を変化させる機構を有していることを示唆する。 ヒストンタンパク質H2A-H2Bに関する成果は、Chirality誌に既に原著論文として報告済みであり、今夏に開催される国際学会でも報告予定である。クロマチンの成果に関しても、結果がまとまり次第、学会、論文等で報告予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
クロマチンの円二色性スペクトル測定に成功した。また、熱ストレスに伴うヒストンの構造変化に関して成果発表ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、DNA損傷を与えた細胞由来のクロマチンの構造解析および構造の時間変化を円二色性分光により追跡する予定である。
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Causes of Carryover |
令和5年度に開催される国際学会への参加および成果発表のために研究期間を延長したため。繰り越した予算は旅費、論文投稿費、オープンアクセス費用として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)