2021 Fiscal Year Research-status Report
Introduction of chromosome structural changes into mouse spermatogonia cells for the analysis of their transmission to next generation
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20K12179
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Research Institution | Radiation Effects Research Foundation |
Principal Investigator |
野田 朝男 公益財団法人放射線影響研究所, 分子生物科学部, 部長 (40294227)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱崎 幹也 公益財団法人放射線影響研究所, 分子生物科学部, 研究員 (80443597)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 放射線被曝 / ゲノム / 突然変異 / 遺伝子編集 / 精原幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
放射線被曝はゲノムDNAに傷を付け、これが原因となり次世代に遺伝する突然変異が生じると考えられている。事実、培養可能なヒト細胞や実験動物の細胞(体細胞)を放射線照射し、生き残った細胞クローンを調べると、照射線量に比例した遺伝子突然変異頻度の増加が観察される。ゲノムレベルの解析では、放射線のゲノムへの影響は大規模な欠失や付加、あるいは染色体転座、逆位などが特徴とされる。では、個体レベルではどうか?父親あるいは母親被ばくの影響は培養体細胞とおなじ特徴を持って子供 (被曝二世) に継承されるのだろうか?この問題は原爆被爆二世やチェルノブイル被曝二世の例でも未だ明らかでない。本研究では、モデル実験としてマウス生殖細胞の放射線誘発突然変異を調べ、さらに大規模な欠失や付加、あるいは染色体転座、逆位を人工的に作成して、それらの次世代への遺伝性を検証するものである。初年度は培養可能なマウス精原幹細胞 (mouse germline stem cells: GS細胞) を用いて、放射線被ばくにより生じる突然変異の構造解析を試みた。被曝GS細胞クローンの全ゲノム解析(シーケンス)を行った結果、放射線被曝に特徴的な変異を検出する事に成功した。第2年度(2021)では、大規模な染色体欠失や逆位、転座を遺伝子編集技術 (CRISPR/Cas9) にて人工的に作成することを試みた。今回は代表的なマウス細胞m5sを用い、効率の良い染色体構造変異の作成技術開発に取り組んだ結果、100bpから10kb規模においては欠失変異を効率良く創出できることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスm5s細胞は、京都大学放射線研究センターの佐々木正夫教授がマウス胚から作成した培養細胞であり、安定した染色体を保持しつつ無限増殖が可能である。この細胞を用いて、染色体の特定部位に構造変異を導入することを計画した。用いる部位としては、大規模欠失が生殖細胞(例えば精原細胞)に生じた場合でも細胞は致死に至らず、さらに受精後は正常な次世代個体が得られる必要がある。この例として、親マウスの放射線被曝により仔マウス第6番染色体に約13Mbpに渡る大規模欠失が生じたとの報告(Kodaira et al, Radiat Res 187:722)から、その領域内のCntn4遺伝子座領域を標的とした。Cntn4は必須遺伝子ではないが機能遺伝子であり、この領域のクロマチン構造はオープンで、効率の良いCRISPR/Cas9による二重鎖切断(DSB)が期待された。DSBを同時に2つ導入することにより、遺伝子内の任意の起点部分から100bp, 1Kbp, 10Kbp, 100kbpの欠失を作成することを試みた結果、100bp欠失作成の例では導入ベクター発現細胞の約60%で染色体の両アリルの欠失が確認できた。一方、10kbの欠失作成例では、約37%で欠失が観察された。1Kbp欠失では効率が低く、また、100Kbp欠失は未だ達成できていない。このことから、DSBを導入する標的部位のシーケンス選別が重要であることが予測され、また、大規模欠失は効率が悪いことも考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス精原幹細胞の突然変異については全ゲノムレベルでの解析結果をまとめる。これにより、放射線被曝により生じる精原細胞突然変異の特徴を明らかとすることが可能になる。但し、大規模な構造変異は頻度が低く、現時点でも1個しか確認できていない。過去の報告でも、親マウス4Gy照射により仔マウス100匹に1匹の割合でしか検出されていないことから、放射線被曝に特徴的な染色体異常の次世代への伝達は相当に効率が悪いと考えられる。つまり、多くの構造変異は次世代へ継承されないと思われる。この仕組みを解明するためには、人工的に作成した染色体構造変異をもつGS細胞の雄マウスへの移植と、精子形成、受精過程の観察が必要である。これにより、ゲノム異常を持つ生殖細胞を排除する仕組みを明らかとすることが本研究の最終目標である。CRISPR/Cas9による複数のDSB導入と染色体の大規模欠失を実現するには、切断点どうしの誤った再結合が必要である。大規模な染色体構造変異を効率よく達成することを目標として、今後はDSB repair inhibitor の併用により人工染色体欠失を実現することを試みる。
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Causes of Carryover |
令和3年度ゲノム解析での使用計画として計上した
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[Journal Article] Ethical, legal and social implications of human genome studies in radiation research: a workshop report for studies on atomic bomb survivors at the Radiation Effects Research Foundation2021
Author(s)
Noda A, Kato K, Tamura C, Biesecker LG, Imaizumi M, Inoue Y, Henderson GE, Wilfond B, Muto K, Naito M, Kayukawa J.
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Journal Title
J. Radiat. Res.
Volume: 62
Pages: 656-661
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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