2021 Fiscal Year Research-status Report
親電子ストレスの可逆性担保における活性イオウ分子の意義
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20K12180
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
安孫子 ユミ 筑波大学, 医学医療系, 助教 (80742866)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 親電子修飾 / 親電子物質 / パースルフィド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、タンパク質結合パースルフィドもしくはポリスルフィド(P-SSH/-SSnH)への親電子修飾は可逆的であるか示し、毒性学および予防医学において活性イオウ分子の重要性を提示することを目的としている。用いる環境中親電子物質は主に、タバコ煙中に含まれる1,4-ベンゾキノン (1,4-BQ)、大気中に存在する1,2-ナフトキノン (1,2-NQ)、および食品中に含まれる(E)-2-アルケナール類もしくはアクリルアミドである。親電子物質の標的タンパク質として酸化ストレスのセンサータンパク質として知られるプロテインチロシン脱リン酸化酵素 (PTP) 1Bを用いること計画している。R3年度は、1,2-NQ、1,4-BQもしくは(E)-2-アルケナール類と反応させたPTP1Bは活性が阻害される結果を得た。本活性阻害は、DTTなどの還元剤で回復しなかった。パースルフィドのモデル化合物である二硫化ナトリウムを処理して、PTP1Bにタンパク質結合パースルフィドを付加した後に、当該PTP1Bと親電子物質とを反応させると、DTTなどの還元剤で活性が回復することが明らかになった。タンパク質結合パースルフィドを修飾した親電子物質がDTTで還元されると、親電子物質イオウ付加体が遊離することが予想される。遊離した親電子物質イオウ付加体を同定するため、モデルとして1,4-BQと硫化ナトリウムを反応させて解析条件の検討を行ったところ、反応液中に1,4-ヒドロキノン-SO3H付加体のMSナンバーと一致するピークが認められた。1,4-BQと反応したパースルフィド化したPTP1Bが還元されると、1,4-ヒドロキノン-SHもしくは1,4-BQ-SHが遊離すると想定されるが、酸化して本付加体のようにSO3H体として検出される可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
細胞実験において環境中親電子物質の複合的な曝露によりPTP1B/EGFRシグナル活性化を亢進することおよびNa2S2の存在下では環境中親電子物質曝露で見られる当該シグナル活性化が抑制されることを見出しているが、今年度用いる予定であったUPLC-MSの不調のために親電子物質のイオウ付加体の検出が遅れている。そのため、"やや遅れている"とした。
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Strategy for Future Research Activity |
UPLC-MSの不調が続く場合は当初の予定を変更し、タンパク質のシステイン残基への修飾を検出系の改善を行う予定である。また、PTP1Bタンパク質結合パースルフィドへの親電子修飾による活性阻害はDTTで回復した結果を得たが、他の還元剤でも同様な結果か否か詳細に検討する。さらに、これまで本研究で扱わなかったメチルビニルケトンのようなその他の親電子物質についてもEGFRの活性化を指標にPTP1Bへの影響を確認するべきか検討していく。
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Research Products
(4 results)