2021 Fiscal Year Research-status Report
海綿・海藻の生産する脂溶性臭素化合物のアジアにおける分布拡大と生物濃縮機構
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20K12188
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Research Institution | Daiichi University, College of Pharmaceutical Sciences |
Principal Investigator |
原口 浩一 第一薬科大学, 薬学部, 教授 (00258500)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 由希子 第一薬科大学, 薬学部, 講師 (80733542)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 海藻 / 海綿 / 臭素化合物 / 生物濃縮 |
Outline of Annual Research Achievements |
東アジア海域の海洋生物で生産される脂溶性の有機臭素化合物(OH-PBDEs)は、ヒトや海洋哺乳動物に残留している。しかし、その発生源から蓄積までの過程は明らかでない。OH-PBDEsは海洋微生物が起源となり、生物濃縮による食物連鎖により各種海産食品を経由してヒトに取り込まれると考えられる。2021年度は、前年度に確立した臭素化フェノール類の前処理法に検討を加えた。残留性の高い臭素化合物のうち、これまでに検出されていない新規天然臭素化学物質を探索するため、LC/MS/MSを用いたノンターゲッティング法を改良し、海洋生物の天然臭素成分の探索に用いた。分析対象試料として東南アジアの海綿2種、海藻24種、その他海洋生物7種を用いた。分析試料の約30%で6-hydroxy-BDE47が主成分として検出された。またノンターゲット分析法により、5-7臭素化のdihydroxy-BDEsが数種同定され、さらにdihydroxy-diphenoxybenzeneが新たに検出された。こうして本法が生体試料中の天然臭素化フェノール類の分析に有用であることが分かった。 次に、日本国内で市販されている乾燥エビ食品34検体を対象として、臭素化フェノール類をGCMSおよびLCMS/MSにより定性・定量した。その結果、4種のOH-BDEsとそれらのmethoxy体が検出された。そのうち、主成分は6-hydroxyおよび6-methoxy-BDE47であった。これらは日本の海藻食品で検出されているOH-BDEsと同じ異性体であった。市販乾燥エビのOH-BDEsの濃度は、地域差があるものの、日本近海の魚介類から検出されるOH-BDEsの濃度より低いことが分かった。天然OH-BDEsは、エビ以外の甲殻類にも残留していると考えられ、今後、継続的なモニタリングを実施していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1)東南アジアでのサンプル収集が困難になった。 (2)化学計測で用いる臭素系標準試薬(海外輸入品)の入手が遅れがちである。 (3)回収率およびデータの解析が不十分、または困難なことから、追試験が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 東南アジアからのサンプル収集は困難が予想されるため、すでに収集保管してある海藻、海綿および海洋生物を用いて、成分探索を行うと同時に、国内での市販食品等を継続的に収集する。 (2) 海綿および海藻が産出するOH-PBDEs の化学形態の探索を継続する。
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Causes of Carryover |
研究計画の遅れ、サンプル収集のための海外出張を断念したことにより、未使用額が発生した。本年度は、国内でのサンプル収集と化学計測に使用する。
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[Journal Article] 2,2',4,4',6,6'-六塩素化ビフェニル(CB155)のラット、モルモット、およびヒト肝ミクロゾーム、およびヒトチトクロムP450による代謝.2021
Author(s)
太田 千穂, 加藤 善久, 藤井 由希子, 原口 浩一, 木村 治, 古賀 信幸.
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Journal Title
福岡医学雑誌
Volume: 112
Pages: 127-135
DOI
Peer Reviewed
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