2020 Fiscal Year Research-status Report
Role of phospholipid remodeling in lung fibrosis caused by the harmful particulate matters
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20K12190
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Research Institution | Japan Organization of Occupational Health and Safety Japan Bioassay Research Center |
Principal Investigator |
武田 知起 独立行政法人労働者健康安全機構 日本バイオアッセイ研究センター(試験管理部、病理検査部), その他部局等, 主任研究員 (60596831)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 有害粒子状物質 / じん肺 / リン脂質 / 肺サーファクタント / 結晶性シリカ / インジウム・錫酸化物 / 肺胞マクロファージ / 2型肺胞上皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究ではまず、じん肺を引き起こす代表的な有害性粒子状物質である結晶性シリカおよびインジウム錫酸化物 (SITO) による急性期の肺毒性病態を把握することを目的とし、両物質を雌ラットに単回気管内投与し、投与3日後および28日後に得られた肺サンプルを用いて生化学的解析ならびに病理組織学的解析を行った。その結果、両物質の投与群では肺に多数の白色班が認められ、気管支肺胞洗浄液 (BALF) 中において好中球の増加や間質性肺炎マーカーであるサーファクタントたんぱく質 (SP)-D等の各種マーカーの高値がみられた。上記の影響は、SITO の方が顕著であり、SITO群では投与3日後よりも28日後で増強傾向を示した一方で、結晶性シリカ群は軽減傾向であった。また、SITO群ではマクロファージの空胞変性が散見され、病理組織学的検査の結果、顕著な肺胞マクロファージ障害による肺胞蛋白症が認められた。これに対し、結晶性シリカ群では、マクロファージ毒性は限定的であり、脈管周囲のリンパ球集簇や間質での被験物質貪食マクロファージの集簇を特徴とする病変像がみられた。また、両者ともに2型肺胞上皮細胞の反応性過形成も認められた。以上のように、両者の急性期病態には明らかな相違点があることが示唆された。現在、じん肺の病態解析を目指したより長期的な動物実験 (最長1年間の飼育期間) を実施中であり、次年度はこれらによって得られるサンプルを用いたサーファクタントの分析などを計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナウイルスの感染拡大と緊急事態宣言によって大幅な遅延が懸念されたが、研究計画に従って動物実験が開始できており、2021年度中にはサンプルの解析に着手できる見込みである。並行して、本研究の核となるリン脂質分析についても、今年度に予備的検討を開始しており、分析機器の整備についてもほぼ遅滞なく進められている状況である。以上の状況から、現時点ではおおむね順調に進展しているものと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
8月に得られるサンプルを用いてリン脂質分析を実施するため、その時期を目途に適切な分析方法を検討する。2021年度中にリン脂質の変動を把握し、細胞培養実験へと移行する。 その他、研究協力者と連携しながら、病理組織学的解析と被験物質の定量分析についても引き続き進める計画である。
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Causes of Carryover |
当初見込んでいた国内学会参加が、社会的なコロナウイルスの感染状況によって中止または自主見合わせを余儀なくされた。また、当初の計画においては分析検討のための出張を見込んでいたが、当センターにおいて新たに分析機器が導入できる運びとなった。以上のことから、これらの当初見込んでいた旅費がゼロとなり、その一部を消耗機材費に充てた残額について次年度使用額とし、学会参加にかかる旅費や物品費等に充てることとする。
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