2021 Fiscal Year Research-status Report
Role of phospholipid remodeling in lung fibrosis caused by the harmful particulate matters
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20K12190
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Research Institution | Japan Organization of Occupational Health and Safety Japan Bioassay Research Center |
Principal Investigator |
武田 知起 独立行政法人労働者健康安全機構 日本バイオアッセイ研究センター(試験管理部、病理検査部), その他部局等, 主任研究員 (60596831)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 有害粒子状物質 / じん肺 / リン脂質 / 肺サーファクタント / 結晶性シリカ / インジウム・錫酸化物 / 肺胞マクロファージ / 2型肺胞上皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
酸化インジウムスズ (ITO) または結晶質シリカをラットに単回気管内投与した結果、投与後早期より肺には多数の白色斑がみられるとともに肥大化した。さらに、気管支肺胞洗浄液 (BALF) 中においては、好中球数が激増すると共にLDHおよびサーファクタントプロテイン-D等の各種障害マーカーの高値も投与3日後より持続的にみられた。これらの変化はいずれも、ITO群の方がより顕著であった。病理組織学的解析を行った結果、ITO群では主に肺胞マクロファージ障害による肺胞蛋白症が急性期から慢性期に一貫して認められた。シリカ群では、急性期には脈管周囲のリンパ球集簇や間質での貪食マクロファージ集簇、慢性期には膠原繊維や過形成病変を中心とした大結節性病変を認めた。これらの結果から、これらじん肺を引き起こす有害粒子状物質間で、急性期から慢性期にかけて質的に明らかに異なる肺障害が進展していく様子が確認できた。そこで引き続き、これらのラットより採取した血漿及びBALFを用いてTOF-MS装置によるメタボロミクスを行い、病態時における変動成分を探索した。その結果、ITO群では肺胞蛋白症を支持してBALF中で100種超のリン脂質の顕著な増加を認め、シリカ群でも少数みられた。さらに、両物質共にスフィンゴミエリンやセラミドなどの増減も多数みられ、肺内でのこれら脂質代謝系が異常をきたしていることが示唆された。血中では、両物質に共通してoleamide等の脂肪酸アミドやリゾリン脂質 [LPC(18:2)、LPC(16:1) 等] の増加を認めたほか、Min-u-sil5群に特徴的なセラミドの増加も推定され、これらの変化は急性肺障害に関連する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた動物実験が昨年度中に終了し、投与した2物質によるじん肺の病態モデルラットの作成に成功した。これらの動物からサンプル採取が実施できたため、このサンプルを用いてリン脂質などの成分分析を行っている状況であり、特段問題がなく進行しているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、ラットサンプルを用いたリン脂質の分析を行い、病態に関連する成分変化を抽出していく予定である。
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Causes of Carryover |
2021度は、物品費に関してはほぼ予定通り執行できたが、2020年度の未使用額として執行予定であった学会への参加費用に加えて、2021年度に計上していた学会への参加旅費も、引き続きコロナ感染拡大などの問題によりオンライン形式となったため、旅費として計上していた一部が使用できなかった。 これらの次年度使用額についての最終年度の使用計画として、今回作成した動物の病態モデルについて、病態の性質が全く異なることがわかったため、より多角的なデータを取得するための実験を行うために、試薬消耗品代に充当することとしたい。
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