2021 Fiscal Year Research-status Report
Seasonal fluctuation and regional characteristics of epigenetic induction via miRNA by airborne particles
Project/Area Number |
20K12195
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Research Institution | Osaka Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
長谷井 友尋 大阪医科薬科大学, 薬学部, 准教授 (10388027)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥平 桂一郎 大阪医科薬科大学, 薬学部, 教授 (10425671)
鳥羽 陽 長崎大学, 薬学部, 教授 (50313680)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 環境 / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、遺伝子変異を伴わないエピジェネティクスが発がんに関連していることが明らかになってきた。呼吸により曝露する大気粉塵にもエピジェネティクス誘発活性があることは少数報告されているが、それらは長時間捕集した単一あるいは少数の大気粉塵試料についてエピジェネティクスの誘発を報告するのみで、呼吸器系疾患の予防・予測に最も重要であると考えられるエピジェネティクス誘発活性の季節変動及び地域特性については全く明らかにされてこなかった。本研究は大気粉塵のエピジェネティクス誘発活性の季節変動及び地域特性を系統的に明らかにすることを目的として実施した。 2021年度は、2020年度に引き続き日本国内において大気粉塵を1週間連続して捕集した。1年間を春(3月、4月、5月)、夏(6月、7月、8月)、秋(9月、10月、11月)及び冬(12月、1月、2月)の四季に分けて粉塵濃度の平均値を算出した結果、この1年間に捕集した大気粉塵の粉塵濃度の平均値は春と秋が高く、夏と冬に低い傾向が認められた。昨年度、夏に捕集した大気粉塵は多くの試料が秋と同程度の粉塵濃度であったが、一部の試料で粉塵濃度が急激に高くなる傾向が認められた。一方、今年度は秋の方が夏よりも高い平均粉塵濃度が得られたことから、昨年度は夏に、今年度は秋に越境輸送など何らかのイベント発生が影響し粉塵濃度の急上昇が生じたと考えられた。このため、イベントの発生の有無によるエピジェネティクス誘発活性の変動を評価する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は昨年度に引き続き、高槻市(代表者:長谷井)、名古屋市(研究協力者:池盛)及び長崎市(研究協力者:久保)の計3地点においておよそ1年間総大気粉塵(TSP)を捕集した。各地点において、1週間連続捕集を各月2回実施することで、TSP試料が得られた。上記TSP抽出物をもってエピジェネティクスの季節変動及び地域特性の解明に用いる。また、昨年度に引き続き高槻市及び名古屋市の2地点において、およそ1年間分級大気粉塵(PM2.5及び粗大粒子)を捕集した。各地点において1週間連続捕集を各月2回実施することで、分級大気粉塵試料(PM2.5及び粗大粒子)が得られた。上記PM2.5及び粗大粒子の分級大気粉塵試料をもってエピジェネティクスの粒径分布の解明及びその季節変動と地域特性の解明に用いる。 1年間を春(3月、4月、5月)、夏(6月、7月、8月)、秋(9月、10月、11月)及び冬(12月、1月、2月)の四季に分けて粉塵濃度の平均値を算出した結果、この1年間に捕集した大気粉塵の粉塵濃度の平均値は、昨年度の結果と異なり春と秋が高く、夏と冬に低い傾向が認められた。秋に捕集した大気粉塵は多くの試料が夏と同程度の粉塵濃度であったが、一部の試料で粉塵濃度が急激に高くなる傾向が認められたことから、越境輸送や火山噴火など何らかのイベント発生が影響し粉塵濃度の急上昇が生じたと考えられた。 2019年末から続いている新型コロナウイルス感染症の蔓延による教育へのエフォートの急増並びに諸外国から輸入している研究試薬などの入手に滞りが生じたため、研究計画の段階で想定していたほどの研究の進展には至らなかった。しかしながら、最も重要なステップであるTSP及び分級大気粉塵試料の捕集は予定通りに進んでおり、2022年度にエピジェネティクス誘発活性について評価していくことで問題なく計画を遂行できる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況に記したように、2020年夏及び2021年秋の大気粉塵にイベントが発生したと考えられる形跡がある。このため2020年の夏と、イベントの発生していない2021年の夏の大気粉塵を比較することでイベントの発生の有無によるエピジェネティクス誘発活性の変動を評価する必要がある。高槻でのTSP及び分級大気粉塵は2022年度も捕集を継続する。 2020年度及び2021年度に捕集した大気粉塵を順次抽出し、エピジェネティクス誘発活性を評価していくことで、計画通りエピジェネティクス誘発活性の季節変動(長期経時変動)、地域特性並びに粒径分布を明らかにしていく。また、研究の進展によっては研究計画を発展させ、大気粉塵のエピジェネティクス誘発活性の経日変動(短期経時変動)、大気粉塵の水抽出物のエピジェネティクス誘発活性、大気ガス相のエピジェネティクス誘発活性、同じ高槻市内における大気粉塵のエピジェネティクス誘発活性の違い(狭域における地域特性)を明らかにすることも計画している。
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Causes of Carryover |
2019年末から新型コロナウイルスの蔓延により所属する大学での教育へのエフォートが急増したことに加えて、諸外国から輸入している研究試薬・器具などの入手に滞りが生じた結果、研究計画に遅れが生じてエピジェネティクス誘発活性の評価が計画していたよりも進まなかった。このためエピジェネティクス誘発活性の評価を次年度に実施する必要が生じ、次年度に研究費が必要となる。また、次年度の研究の進展によっては、越境輸送等のイベント発生を明らかにすべく、イオンクロマトグラフの購入に充てることも計画している。
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