2020 Fiscal Year Research-status Report
多面的指標を用いた神経発達毒性の新たな評価系の構築
Project/Area Number |
20K12199
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
伊藤 智彦 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク・健康研究センター, 主任研究員 (60391067)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 多能性幹細胞 / 神経発達毒性 / 殺虫剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、マウスES細胞であるB6G-2細胞を用いて、神経発達毒性の解析モデルの構築を行った。マウスES細胞を低吸着性丸底96 well plateに播種し、6日間培養することで胚様体(EB)を形成させた(Day 6)。その後、更に神経系への分化を促進させるため、EBをsingle cellとした後、poly-ornithine/lamininコートしたディッシュに播種し、RHB-A(TaKaRa Bio)にbFGFおよびEGFを添加した培地で培養した。4日目の細胞をプライマリー神経幹細胞とした(Day 10)。更に継代し、4日間、培養したものをセカンダリー神経幹細胞とした(Day 14)。それぞれの神経幹細胞をB27を添加したBrainPhys(STEMCELL Technologies)で4日間、培養して神経系への分化を行った解析から、プライマリー神経幹細胞からは主に神経細胞が、セカンダリー神経幹細胞からは神経およびグリア細胞の両方が誘導されることがわかった。この系を用いて毒性評価を実施した。神経発達毒性を示すモデル化合物として、各種の殺虫剤を使用した。評価法は細胞毒性と各エンドポイントとの比で求めた。セカンダリー神経幹細胞から分化させるタイミングで曝露した結果、いずれの殺虫剤についてもグリア細胞への誘導の抑制が見られた。特にchlorpyrifosに強い神経発達毒性が見られた。これらの結果から、グリア細胞への誘導能への影響が神経発達毒性の評価の一つとして有効である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスES細胞から神経幹細胞の誘導および神経系への分化系を構築した。計画では、分化させた神経系細胞の生理活性として膜電位変動およびカルシウム動態を測定する予定であったが、分化させた神経系細胞を完全に成熟させることができず、自発的活動が見られなかったため、検討課題として残っている。そのことから、神経系分化を対象とし、殺虫剤による影響評価を先に実施し、分化抑制の影響を検出した。また、難燃剤等の他の化学物質についても、同培養系で検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、更に毒性評価のためのエンドポイントを増やすため、シナプス形成の解析、オートファジーへの影響、膜電位およびカルシウム流入について進め、より包括的な解析に進展させる。また、RNA-seqによる遺伝子発現網羅的解析や阻害剤による抑制効果を見ることで、神経発達毒性のメカニズムの探索を進めていく。
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Causes of Carryover |
R2年度、神経系細胞の膜電位変化や細胞内カルシウム動態といった生理機能の解析を蛍光色素で染色してCMOSカメラで高速撮影して行う予定であった。そのため、顕微鏡用のCMOSカメラを購入する予定であったが、マウスES細胞から神経系細胞への分化は行ったものの細胞が完全に成熟せず、細胞の機能の解析が行えなかったことから、機器の選定や予備検討を行うことができず、機器の購入に至らなかった。R3年度、機器の選定、購入を行い、解析を検討する予定である。
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