2022 Fiscal Year Annual Research Report
多面的指標を用いた神経発達毒性の新たな評価系の構築
Project/Area Number |
20K12199
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
伊藤 智彦 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク・健康領域, 主任研究員 (60391067)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 神経発達毒性 / 環境汚染物質 / マウスES細胞 / グリア細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、神経発達症の患者数が増加してきており、環境中の化学物質の曝露影響が要因の一つとして懸念されている。こうした問題に直面し、様々なin vitroでの神経発達毒性の評価系が構築されてきているが、本研究では、マウスES細胞を用いた神経発達毒性評価系の検討と機序解明を目的とした。マウスES細胞から胚様体(EB)を形成させ、その後、シングルセルとし、平面培養および継代を行うことで神経幹細胞を誘導した。その結果、継代前のプライマリー神経幹細胞からは神経細胞が、一度、継代を行ったセカンダリー神経幹細胞からは神経およびグリア細胞が誘導されることが確認できた。この神経分化培養系を用い、各神経幹細胞からの分化段階で、神経発達毒性が報告されている6種類の殺虫剤を曝露して分化に対する影響を調べた。その結果、神経細胞分化への影響は見られなかったが、セカンダリー神経幹細胞からグリア細胞への分化に対して各殺虫剤が抑制効果を示すことがわかった。これらグリア細胞分化に対する影響は、これまで報告されているin vitroでの神経発達毒性影響と比べても非常に感受性が高いことがわかり、神経発達毒性の評価法として有効であることが考えられた。R4年度はRNA-seqによる遺伝子発現変動網羅的解析を更に進め、殺虫剤の影響にMAP kinaseが関与することが示唆された。また、二次元培養系を更に発展させるため、生体模倣システム(MPS)を用いた三次元培養系の検討を行った。以上の結果、本培養系は環境中に存在する無数の化学物質を対象とし、神経発達毒性の潜在性を持つ可能性のある物質を短期間に感度よくスクリーニングできる有効な手法であると示唆された。
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