2022 Fiscal Year Research-status Report
淡水域で障害を引き起こすカビ臭産生シアノバクテリア情報についての基盤整備
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20K12201
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
辻 彰洋 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究主幹 (40356267)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ジオスミン / Dolichospermum / TAC株 / geoA / D. hangangense |
Outline of Annual Research Achievements |
国立科学博物館植物研究部で開発してきたTAC株と関連株について、ジオスミン産生遺伝子geoAをSuurnakki et al. (2015)によるプライマーセット(geo78F GCATTCCAAAGCCTGGGCTTA & geo971R CCCTYGTTCATGTARCGGC)を用いて網羅的な検索を行った。その結果、Dolichospermum planctonicum, D. smithii, Anabaena macrospora, D. circinale等として同定されてきた株からgeoA遺伝子が検出されたが、rbcLおよび16S rRNA遺伝子を用いて同定について再検討したところ、Choi et al. (2018)および Li et al. (2020)によって韓国の河川から最近新種記載されたDolichospermum hangangense H.J.Choi & M.-S.Han にほとんどのものが一致した。また、既存のgeoA遺伝子を用いた論文で用いられた株についても再校した結果、Youn et. al. (2018)がジオスミン産生遺伝子の解析に用いたNIES-1647は私たちが城山湖から分離したTAC497由来であるが、これも私たちの解析の結果、D. hangangenseと再同定できた。またYoun et. al. (2018)がA. circinalisとした株は登録されている16S rRNAおよびrbcL遺伝子による解析の結果、D. hangangenseクレードに入りTuji et al.(2023)がD. sp. cf circinaleとした分類群と考えられる。この様に、ジオスミン産生種は数多く報告されているが、その多くがD. hangangenseクレードに入るものであることが分かった。 2-MIBおよび毒遺伝子については、偽増殖が見られたため、その原因を調べており、継続中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ジオスミン産生遺伝子の解析の結果、従来の報告の混乱について、明確な結果を出すことが出来た。この結果は現場での解析に大きな影響を及ぼすと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在1本の論文を投稿中で、もう1本の論文も執筆中である。本研究の成果を幅広く公表していくことで、混乱していた現場でのDolichospermum属の分類に一石を投じることが出来ると考えている。一方、毒遺伝子の解析の方は、手法の問題で遅れている。最終年度であるので、そこに注力したい。
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Causes of Carryover |
遺伝子解析に関わる物品で一部納品に遅れが出たために、試薬の購入を一部遅らせた。
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Remarks |
本研究の成果に基づいて追加修正を行った。
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