2021 Fiscal Year Research-status Report
漂流マイクロプラスチックを媒体とした化学物質汚染とその蓄積プロセスの解明
Project/Area Number |
20K12206
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
三小田 憲史 富山県立大学, 工学部, 助教 (80742064)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マイクロプラスチック / 水環境 / 多環芳香族炭化水素 / 吸着 |
Outline of Annual Research Achievements |
マイクロプラスチックに対する疎水性環境汚染物質の蓄積の実態およびそのメカニズムの解明に向けた実験解析を行った。室内実験ではポリエチレン粒子を用いた劣化処理と、劣化が吸着におよぼす影響について解析した。前年の調査において、環境中での劣化が何らかの要因によって多環芳香族炭化水素(PAH)のマイクロプラスチックに対する吸着量を変化さ得ることが示唆されていた。そこで劣化過程の解析と吸着量変化の要因について解析を試みた。最大で5日間、太陽光を再現した光源を用いてポリエチレン粒子へのばく露を行い、回分式の吸着実験を行った。また劣化処理後のプラスチックの性状を評価するためにFR-IRやSEM、BET比表面積測定による分析を行った。BET法による測定では実験に用いたプラスチックの比表面積評価が困難であったものの、SEMによる観察では照射開始1日後の試料においても粒子表面にクラックが生じていることが明らかになった。また、FT-IRによる測定では、カルボニル基由来のピークは対象区と同程度であったことから、ばく露による顕著な酸化は確認されなかった。吸着実験では加熱処理した試料では対照区とピレンの吸着量が同程度であったものの、擬似太陽光ばく露後の試料では溶解度付近の濃度においてピレンの吸着量増加が見られた。環境中から採取したプラスチック粒子については、研究事例が少ない河川での調査を継続しながら、海域のマイクロプラスチックも対象として研究を行った。海域の漂流物は調査に時間やコストがかかるため、海岸漂着物の中からマイクロプラスチックを選別してPAHを分析した。今回対象とした海岸漂着物におけるPAHは全体の濃度としては河川とほぼ同じであったものの、河川の試料に比べて低環成分の寄与が小さくなり、逆に高環成分の占める割合が増加する傾向にあった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水環境に存在するマイクロプラスチックに対する汚染物質の蓄積メカニズムについて、劣化によるプラスチックの変化過程とPAHの蓄積量変化に与える解析が進展したため。また他機関との共同研究を通じて、河川だけでなく海岸漂着物に吸着している化学物質濃度に関するデータも順調に得られた。このことから概ね順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も引き続き、プラスチックの劣化と環境汚染物質の吸着の関係性について実験し、より詳細な解析を行う。特に太陽光による劣化に着目し、適切なコントロール実験を行いながら劣化が吸着に与える影響がプラスチックのサイズ・材質によってどのように異なるのかを検証する。劣化処理後のプラスチックについては、劣化処理によって脆化および微細化が生じているかどうかも含めて検討を行い、吸着量変化の要因を考察する。 フィールド調査については河川マイクロプラスチックと海岸漂着マイクロプラスチックを対象にしたPAHの測定結果から、特性の違いやその理由について考察を行う。新型コロナウイルスの状況を考慮しながら可能であれば追加のサンプリングを行い、さらに調査を進める。海水と河川水で、プラスチックのサイズや材質等の条件を揃えた上で、プラスチックに対するPAHの吸着係数を比較し、劣化度や漂流時間、環境水のPAH濃度の観点から考察する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス拡大により、現地参加を予定していた学会がオンライン参加となったため。また、同じ理由によりサンプリングのための出張が一部取りやめになったため。
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Research Products
(2 results)