2021 Fiscal Year Research-status Report
コプロスタノールによる硝酸汚染地下水の原因分離と汚染源評価手法の開発
Project/Area Number |
20K12209
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中川 啓 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 教授 (90315135)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 硝酸性窒素 / 地下水汚染 / 汚染指標物質 / コプロスタノール |
Outline of Annual Research Achievements |
研究対象地とした長崎県島原市は,硝酸性窒素による地下水汚染が深刻であり,効果的な地下水汚染対策を実施するために,汚染原因を分離する指標物質として糞便汚染指標の一つであるコプロスタノールの利用を提案してきた.しかしながらその河川水中の濃度と地下水中の濃度のレベル間に差が認められ,その要因は土壌や堆積物中における吸着などと予想されている.本研究では,コプロスタノールを汚染指標物質としての利用をサポートするため,初年度に,コプロスタノールの土壌中における反応輸送特性を調べるための実験を行ったところ,その反応輸送特性を十分に定量化できなかった.そこで,今年度は,(a)まず土(島原市内採取土壌)及び砂 (鳥取砂丘砂)の吸着等温線を求める実験を行った.実験結果よりそれぞれの遅延係数を求めたところ,土に対する強い吸着が確認された.続いてカラム実験を行ったところ,それぞれの遅延係数から想定される時点を超えてもコプロスタノールの流出が検出されなかった.そこで,(b)空のカラムによる実験及び(c)ガラス球を充填したカラムによる実験を行った.(a)における実験からはコプロスタノールの流出が認められず,(b)の実験から,カラム導入部のセラミックフィルター通過後のカラム内から検出できなかったことから,セラミックフィルターによって捕捉されてしまったことが分かった.そこでフィルター材を鉄網や不織布に変更して同様の実験を行ったところ検出されることが分かった.(c)の実験においては,鉄網のフィルターを用いて実験を行い,それが認められたものの1/20前後の濃度となっており,ガラス球に対しても吸着していることが分かった.こうしたことから,実験に用いるカラム装置や実験方法を新たに検討した.研究対象地における地下水シミュレーションを行うためのモデル化の検討を開始した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究プロジェクトの2年目であった2021年度も,初年度に引き続きコロナ禍の影響を受け,初年度の機器の故障に引き続き,ガスクロマトグラフィーの故障への対応が十分にできず,かつカラム実験装置のフィルターによるコプロスタノールの捕捉のためにカラム実験結果を得ることができず,満足な結果が得られなかった.またフィールド調査も初年度に引き続き学内の行動制限のため,調査が進められなかった.一方,数値シミュレーションモデルの基礎となるフィールドデータの収集や土地利用と硝酸性窒素汚染に関する検討など関係する研究発表や論文公表を行うことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた実験結果を踏まえ,本研究プロジェクトで明らかにすべきコプロスタノールの反応輸送特性における吸着特性を解明するための実験方法と装置を最適化して,現地における様々な土壌に対する吸着性能を評価する.これらの実験結果に基づき,表流水と地下水の間の関係性についての概念モデルを構築し,検討を加える.現地調査において地下水と表流水のサンプリングを行い,両者の関係性について検証する.数値シミュレーションによる地下水中における硝酸性窒素とコプロスタノールの輸送特性の違いについて検討を加える.
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Causes of Carryover |
2年目に入ったが初年度に引き続きコロナ禍の影響を受け,フィールド調査や国内の学会,国際会議出席,海外の共同研究者のレビューを受けること,国内外の研究者との研究打ち合わせを予定していたものの,学内の行動制限のため,そういったことを進めることができなかったため次年度使用額が生じた.コプロスタノールの濃縮系を新たに実験室内に構築する必要性が生じたこと,実験に用いていたカラムや器具をガラス製に置き換えることも必要となってきたため,そうした実験環境の整備に使用する.また,これまでに得られた研究成果の国内外での発表のための登録料や旅費などとしての使用,さらにはオープンアクセスの論文投稿料などとして使用予定である.実験のための試薬や窒素ガス,ガラス器具など,高頻度に用いるものに使用予定である.
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[Presentation] The Spatiotemporal Change Features of Groundwater Nitrogen Content in Miyakonojo River Basin, South Japan2021
Author(s)
Yu, Z-Q, Nakagawa, K, Berndtsson, R, Hirano, T, Suzuki, Y
Organizer
The 4th Environmental and Natural Resources International Conference (ENRIC 2021)