2022 Fiscal Year Research-status Report
コプロスタノールによる硝酸汚染地下水の原因分離と汚染源評価手法の開発
Project/Area Number |
20K12209
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中川 啓 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 教授 (90315135)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 硝酸性窒素 / 地下水汚染 / 汚染物質指標 / コプロスタノール |
Outline of Annual Research Achievements |
研究対象地とした長崎県島原市は,硝酸性窒素による地下水汚染が深刻であり,効果的な地下水汚染対策を実施するために,汚染原因を分離する指標物質として 糞便汚染指標の一つであるコプロスタノールの利用を提案してきた.しかしながらその河川水中の濃度と地下水中の濃度のレベル間に差が認められ,その要因は 土壌や堆積物中における吸着などと予想されている. 本研究では,こうした関係性を明らかにするためにコプロスタノールの特性について,実験及びフィールド調査に基づき検討を加えている.今年度は,申請当初計画Iである地下水中のコプロスタノール濃度決定要因となる吸着特性についての検討に加え,計画IIであるコプロスタノール濃度についてのフィールド調査を行った.計画Iについては,昨年度実施した土及び砂に関する吸着試験に加え河川堆積物を対象として実験を行い,結果を取りまとめた.計画IIについては,6月, 11月, 1月にサンプリングを実施して,地下水水質やステロール類の濃度を測定し,季節的な変動要因や汚染原因特定に関する新たな提案について検討を加えた.ここで明らかにされた季節変動について,より確証を得るため,年間の測定が必要と考えられるため,次年度も引き続き,フィールドサンプリングを進めることを計画している.計画Iに関しては,吸着実験により明らかにされた特性に基づき,表層土壌サンプルにおける硝酸性窒素とステロール類の関係性について検討を加えたいと考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究プロジェクトの3年目であった2022年度は,ようやくコロナ禍の影響が緩和されつつあり,フィールド調査なども実施することができた。研究対象物質であるコプロスタノールの吸着に関する実験は,再現性を確認するための実験なども加え,またその特性について明らかになってきたことを含め論文投稿を行うことができた.また3回のフィールド調査も実施することができ,コプロスタノール自体の季節的な変動特性などを明らかにすることができた.現在は更なる調査を実施する予定である.以上のように本研究課題の実施に基づく成果がいくつか見えてきたことから,おおむね順調に進展していると評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた実験結果を踏まえ,本研究プロジェクトで明らかにすべきコプロスタノールの反応輸送特性における吸着特性を解明するための実験方法や留意点について取りまとめる.申請当初予定していたカラム実験については,少し視点を変え,新たにチャレンジしてみたいと考えている.また,現地における様々な土壌に対する吸着性能を評価するために収集した土壌サンプルについて評価を行う.フィールド調査を継続し,その時間変動特性について要因を明らかにする.フィールド調査結果をサポートするため,数値計算モデルを検討することや既存の数値シミュレーション結果を用いた評価を検討する.
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Causes of Carryover |
計画最終年度に入ったが,初年度からコロナ禍の影響を受け,フィールド調査や国内の学会,国際会議出席,海外の共同研究者のレビューを受けること,国内外の 研究者との研究打ち合わせを予定していたものの,学内の行動制限のため,そういったことを進めることができなかったため次年度使用額を持ち越していた.今年度はそういった障害は緩和されたため,主に実験やフィールド調査において研究費を使用したが,国際会議や海外の共同研究者との打ち合わせは行うことができなかった.こうした理由で研究期間を延長することとなった.本研究の中心となる,ステロール類の分析には,機器分析以前に試料を濃縮するプロセスが必要であり,そのための消耗品が非常に高く,こういった分析のために使用する予定である.また,これまでに得られた研究成果の国内外での発表のための登録料や旅費などとしての使用,さらにはオープンアクセスの論文 投稿料などとして使用予定である.
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