2021 Fiscal Year Research-status Report
ジフェニルグアニジンの水環境動態の解明および流出負荷量モデルの構築
Project/Area Number |
20K12214
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Research Institution | 大阪市立環境科学研究センター |
Principal Investigator |
市原 真紀子 大阪市立環境科学研究センター, その他部局等, 研究員 (60591865)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 敦史 公立鳥取環境大学, 環境学部, 准教授 (40332449)
須戸 幹 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (50206570)
浅川 大地 大阪市立環境科学研究センター, その他部局等, 研究主任 (80470251)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 1,3-ジフェニルグアニジン / シアノグアニジン / 添加回収試験 / 淀川調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度に確立したグアニジン類縁化合物分析法について、河川水を用いた添加回収試験(n=7)を実施したところ、回収率は73~137%、変動係数は2.1~5.8%であり、本分析法の堅牢性が確認された。そこで、2021年度からはグアニジン類縁化合物の淀川流域調査を実施することとした。 2021年5月の予備調査において、バンドーン採水器を用いて湖水を採水したところ、高値の1,3-Diphenylguanidine(DPG)が検出された。DPGはゴム製品の加硫促進剤として使用されるが、バンドーン採水器の両端はゴム素材である。そこで、湖水表層についてステンレスバケツ、(ゴム素材を使用していない)リゴーB型採水器、バンドーン採水器の3種を用いて同時に採水を行い、DPG濃度を比較した。その結果、DPG濃度はステンレスバケツ及びリゴーB型採水器が約5ng/Lに対し、バンドーン採水器は290ng/Lであった。バンドーン採水器のゴム素材がDPGの汚染源と考えられ、採水時の数分程度の接触にも関わらず、バンドーン採水器由来のDPGは速やかに試料水に移行すると考えられた。そのため、以降の採水ではステンレスバケツ及びリゴーB型採水器を用いることとした。また、サンプリング時及び分析時において、DPG汚染源となるゴム製品の使用を避けることとした。 現在は2021年7月から2ヶ月毎の頻度で淀川通年調査を実施中である。調査地点は琵琶湖3地点(表層、躍層、底層)、淀川水系河川4地点(木津川、宇治川、桂川、淀川)、下水処理場放流水5地点、水道水2地点の計14地点であり、本調査は2022年5月に終了予定である。淀川流域の河川及び下水処理場放流水全地点からDPGとCyanoguanidineが検出されており、両者の環境水中における広範囲な存在が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当研究では測定機器に液体クロマトグラフタンデム型質量分析計(LC-MS/MS)を用いているが、研究代表者所属機関のLC-MS/MSが令和3年11月に故障した。9月から機器の調子が悪かったため、令和3年9月、11月、及び令和4年1月調査では1回の調査につき2,3回再測定を行い、また別のLC-MS/MSを用いて併行測定を行うなどLC-MS/MSデータ取得に膨大な時間を要した。また、機器の故障原因が当初不明であったため、修理対応にも時間を要した。そのため、淀川通年調査以外の汚染源調査などのスポット調査について進捗がやや遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
上水道におけるDPG類除去率算出のため、浄水場に協力依頼を行い浄水処理性調査を実施予定である。なお、研究計画では上水道及び下水道においてDPG類除去率算出を行う予定であったが、本研究の調査対象物質は「残留移動性有機化合物(PMOCs)」であり、水道水源水質の汚染が危惧されているため、特にその挙動解明が重要となる上水道における処理性調査を実施することとする。 また、DPGは降雨時に濃度が上昇するという先行研究があることから、降雨調査を実施予定である。1地点について降雨イベントの前後におけるDPG類濃度変化を測定する。その他、降水調査や路面排水調査等の実施を計画中である。
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Causes of Carryover |
研究代表者所属機関のLC-MS/MSが令和3年11月に故障したため、現在は研究の進捗がやや遅れている状況である。そのため、次年度使用額が生じることとなった。来年度以降は降雨調査や降水調査、路面排水調査等を実施予定であるため、それらの調査遂行のために本助成金を使用する予定である。
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