2021 Fiscal Year Research-status Report
淡水資源のヒ素汚染対策における嫌気性ヒ素酸化細菌の有用性の評価
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20K12215
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小島 久弥 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (70400009)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福井 学 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (60305414)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ヒ素酸化細菌 / 硫黄酸化細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
淡水資源のヒ素汚染対策に嫌気性ヒ素酸化細菌を利用するための基盤整備として、モデル微生物候補であるM52株についての研究を進めた。M52株の生育可能なpH範囲を培養実験によって確認し、中性を好むことを確認した。M52株は分類学上の位置が未確定であり、学名が付与されていない。M52株が新属新種であることは過去の研究から強く示唆されていたが、これを正式に確定させるためには国外の菌株保存機関へ寄託が必須の状況にあった。先方との種々の調整を経て必要な手続きが完了したため、M52株および近縁種であるJ5B株を記載して学名を付与するための論文を執筆、これを専門誌に投稿した。この論文を完成させるにあたり、基礎的性状として記述が要求される両株の菌体脂肪酸組成も明らかにした。 M52株およびJ5B株は、特徴的なヒ素酸化酵素であるArxをコードするarxA遺伝子を有している。arxA遺伝子は嫌気性ヒ素酸化細菌を検出するためのマーカーとして利用できることが示唆されている。arxA遺伝子を有する微生物にどのようなものがいるのかを、最新の公共データベースを利用して改めて解析した。その結果、研究代表者によって発見された淡水性硫黄酸化細菌であるSulfurimicrobium lacus skT11株がarxA遺伝子を有していることを新たに確認した。skT11株の遺伝子配列を考慮に入れたうえで、arxA遺伝子解析用の新たなプライマーを設計した。従来のプライマーは、あらゆるarxA遺伝子をカバーするために混合塩基を数多く含んでおり、非特異的な増幅が起こりやすいという問題があった。そこで、多様なarxA遺伝子のなかから、中性に近いpHを好む淡水性細菌に特徴的にみられる系統のものを選び出した。この系統に特化することにより、淡水資源のヒ素汚染対策を目標とした研究により適したプライマーを設計することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、対象微生物の環境中での分布を明らかにするために野外調査を予定していた。前年度に続き、感染症の拡大による各種の制限があり、現地調査を十分な形で実施することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
新たに設計したプライマーを用いて、環境中での嫌気性ヒ素酸化細菌の分布と多様性を明らかにする。可能な範囲での野外調査を実施するとともに、過去に各地で採取された様々な試料も解析の対象とすることで効率的に研究を進める。 また、新たにarxA遺伝子を持つことが確認されたskT11株について、ヒ素代謝能力があるかどうかを培養実験によって確認する。
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Causes of Carryover |
感染症拡大等による各種制限によって、研究計画に遅れが生じたため。 研究活動を大幅に効率化し、計画の遅れを取り戻すことで次年度中に全額を使用する予定。
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