2020 Fiscal Year Research-status Report
Mn(II)酵素活性を有するバイオマンガン酸化物による多機能型金属元素回収
Project/Area Number |
20K12222
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
谷 幸則 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 教授 (10285190)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | バイオマンガン酸化物 / レアメタル / Mn(II)酸化真菌 / 金属回収 |
Outline of Annual Research Achievements |
低濃度かつ多種類の金属元素を含有する排水の処理は環境負荷が大きく、効率の高い排水処理技術の開発が必須である。本研究は、複数の除去対象イオンを共存させた系における酵素活性BMO複合体による除去特性の詳細を調べ、多元素金属イオンに対する酵素活性BMO複合体の除去機構を明らかにし、実排水からの効率的な多元素同時回収のシステム構築を目的としている。Mn(II)酸化真菌Acremonium strictum KR21-2が形成した酵素活性バイオマンガン酸化物複合体(以下、BMO)によるBa2+イオンの除去特性の詳細を調べたところ、Ba2+イオン共存下でBMO相を形成させた場合、Ba2+が非可逆的に収着することで、より強く規定された層状構造が生じることを示唆した。一方、Mg2+、Ca2+、Sr2+の場合は、可逆的収着がほぼ全量の収着量を占めた。このことから、BMO相形成時のBa2+の非可逆的収着は、Ba2+に選択的な収着過程であることを明らかにした。BMO形成過程における希土類元素イオン(REE(III))の収着を調べたところ、Ce(III)を除くすべてのREE(III)は、BMO上へ可逆的な吸着をすることを明らかにした。一方、Ce(III)は、BMO相によりCe(IV)へ効率的に酸化され、不溶化されることが明らかとなった。酵素活性BMO複合体による効率的なCr(III)からCr(VI)への酸化反応が進行することを明らかにした。このプロセスを用いることで、無機元素の酸化変換と難溶性塩形成による回収モードによるレアメタルの回収が可能であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酵素活性BMO複合体は、多機能な元素回収モードを有することが明らかとなりつつあるが、特に排水を想定した多元素共存系における詳細な機構は不明である。本研究では、酵素活性BMO複合体による(1) BMO上への吸着・格子欠陥への取り込みによる元素回収モード(2)複合酸化物形成を利用した元素回収モード(3)異元素酸化物相の形成と取り込みを利用した回収モード(4)無機元素の酸化変換と難溶性塩形成による回収モード、の多様な元素回収モードを想定している。現在までにモード(1)および(2)による元素回収が効率的に進行することを明らかにすることができた。また、モード(3)および(4)についても、酵素活性BMO複合体の酸化能によるCe(III)やCr(III)の連続的かつ効率的な変換が進行することが明らかとなり、本モードにおける元素回収についての可能性を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
継続して、酵素活性BMO複合体を、多元素を含む模擬排水で反応させ、回収除去効率とその機構を下記の(1)から(4)の多様な元素回収モードを想定して詳細に調べる。(1) BMO上への吸着・格子欠陥への取り込みによる元素回収モード:特にREEの回収モードとして有効であるため、REE間の回収選択性や元素回収機構を継続して調べる。(2)複合酸化物形成を利用した元素回収モード:Ba2+イオンについては、層状構造が密なBirnessite構造を形成することで、その取り込みが不可逆になることが明らかとなった。今後は、Ni2+などの重金属イオンについて複合酸化物の形成が生じるかどうかを検証する。(3)異元素酸化物相の形成と取り込みを利用した回収モード:Ce(III)はBMOの間接的な酸化反応によってCe(IV)O2へと容易に酸化されることが明らかとなった、このように二次形成された異元素酸化物相は、ナノサイズ粒子であり、この新たに形成した相への複次的な吸着や取り込み(同形置換)が生じる可能性があるため、他のREEイオンの二次的取り込みを検討し、新しい回収モードとして評価する。(4)無機元素の酸化変換と難溶性塩形成による回収モード:Cr(III)は、酵素活性BMO複合体によって定量的にCr(VI)O42-へと変換されことが明らかになった。CrVIO42-と難溶性塩を形成する金属イオン(例えば、Ag+, Pb2+,Ba2+など)を不溶化できると考えられる本モードによる元素毎の回収率の測定、二次的に形成した固体相のX線結晶回析による同定をおこなうことで、元素回収への適応性を評価する。
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Research Products
(1 results)