2021 Fiscal Year Research-status Report
Mn(II)酵素活性を有するバイオマンガン酸化物による多機能型金属元素回収
Project/Area Number |
20K12222
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
谷 幸則 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 教授 (10285190)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | バイオマンガン酸化物 / レアメタル / Mn(II)酸化真菌 / 金属回収 / コバルト / ニッケル |
Outline of Annual Research Achievements |
低濃度かつ多種類の金属元素を含有する排水の処理は環境負荷が大きく、効率の高い排水処理技術の開発が必須である。本研究は、複数の除去対象イオンを共存させた系における酵素活性BMO複合体による除去特性の詳細を調べ、多元素金属イオンに対する酵素活性BMO複合体の除去機構を明らかにし、実排水からの効率的な多元素同時回収のシステム構築を目的としている。Mn(II)酸化真菌Acremonium strictum KR21-2が形成した酵素活性バイオマンガン酸化物複合体(以下、活性BMO;Mnとして1 mM)を、1 mM Mn(II)と1 mM Co(II) の混合系で3回処理したところ、積算回収率95.0±1.9%でMn(II)が不溶化回収できた。二段階抽出の結果から、不溶化したMnの94.5±0.3%が酸化物態として存在した。溶存Co(II)は、溶存Mn(II)と一定割合(Co/Mnモル比で0.69)を保ちながら不溶化し、高い効率でMn(II)とCo(II)の同時回収ができた。反応終了後の固体相をXRD分析したところ、Coを含有したMn酸化物鉱物の一種であるasbolane鉱が形成していると結論づけた。次に活性BMOを用いて、1 mM Ni(II)と1 mM Mn(II)の混合溶液中で同様な処理をおこなうと、Mn(II)酸化反応が進行し、溶存Mn(II)が減少(積算回収率98.3±1.0%)するとともに、溶存Ni(II)が溶存Mn(II)と一定割合(Ni/Mnモル比で0.42)を保ちながら減少した(積算回収率40.8±2.0%)。また、処理後に回収したBMO固体相のXRDは、feitknechtite鉱 の形成を示唆した。固体相に回収されたNi(II)の96.4±1.0%は、非イオン交換態として抽出されたことから、Ni(II)置換型feitknechtite鉱の形成が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酵素活性BMO複合体は、多機能な元素回収モードを有することが明らかとなりつつあるが、特に排水を想定した多元素共存系における詳細な機構は不明である。本研究では、酵素活性BMO複合体による(1) BMO上への吸着・格子欠陥への取り込みによる元素回収モード(2)複合酸化物形成を利用した元素回収モード(3)異元素酸化物相の形成と取り込みを利用した回収モード(4)無機元素の酸化変換と難溶性塩形成による回収モード、の多様な元素回収モードを想定している。今回の結果は、Mnと親和性の高いCoとNiは、活性BMOのMn(II)酸化酵素作用によって、想定した元素回収モード(2)であるasbolane鉱及びNi(II)置換型feitknechtite鉱を形成することをはじめて明らかにすることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
活性BMOのMn(II)酸化酵素活性作用によるMnの酸化不溶化の過程において、共存するCo(II)及びNi(II)は、不可逆的に取り込まれ、asbolane鉱及びNi(II)置換型feitknechtite鉱などの複合酸化物を形成し、高い効率でMn(II)との同時回収が可能であることを明らかにした。Mn-Co-Niは、充電型バッテリーの主要構成元素群であり、電気自動車への世界的な生産シフトにより、今後、レアメタルの中でも急激な需要量が見込まれる元素群である。これらの元素群が、活性BMOにより高い効率で回収可能であることが示されたが、その詳細なメカニズムは不明である。よって、今後は、特にMn-Co-Niの3成分混合系からの活性BMOによる元素回収について調べる予定である。
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