2020 Fiscal Year Research-status Report
アルギン酸のミクロゲル化およびカチオン化による一液型天然凝集剤の創出
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20K12235
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
榎 牧子 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (90342758)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 天然凝集剤 / アルギン酸 / 凝集剤 / 水処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルギン酸凝集剤の一液型化のために、2020年度は、0.08%アルギン酸水溶液に攪拌下で0.2%炭酸カルシウム水溶液を加え、さらに80℃における温浴・攪拌下において同温に保った塩酸(0.2~5.0M)および40%塩化カルシウム水溶液を順次、加えた。これによって得られる混合液を一液型アルギン酸凝集剤として、ゲル化の様子とカオリン懸濁液に対する凝集性能を評価した。 その結果、塩化カルシウムが少ない場合および塩酸の総投入量が少ない場合に混合液中に粗大ゲルが生じ、凝集試験に用いることができなくなった。逆に塩化カルシウム量および塩酸総量が多いほど、高い凝集性能が見られた。一方、投入する塩酸の濃度は試験で採用した条件の範囲においては影響がみられなかった。凝集性能の評価は、凝集試験後に得られる上澄み液の透明度から判断したが、凝集性能が高い場合ほど、生じる沈殿物(フロック)が大きいことも示された。 以上の結果から、水に不溶性である炭酸カルシウムを混合させたアルギン酸に塩酸を加えることで、アルギン酸上にカルシウムイオンが分散した状態で発生し、偏在によるゲル化が抑制されることがわかった。このことは、塩酸の総量が多いほどゲル化が抑制され、凝集活性の高い混合液が得られることによって支持される。また、塩化カルシウム量が多いほど高い凝集性能が得られるという事実は、アルギン酸が多くのカルシウムイオンでおおわれることによって、ゲル化が抑制されるとともに、分子鎖同士が正電荷によって反発し、よりよく広がって水中に分散するためと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は水処理用凝集剤としてのアルギン酸の一液型化であり、具体的にはその調製条件の検討とメカニズムの解明である。1年目である2020年度は、調製条件の検討を行い、種々のファクターがどの範囲で優秀な凝集性能を導くかを明らかにすることができた。具体的には、塩酸物質量が1.2-1.8×10-3 molであり、この範囲において40%塩化カルシウムは6~24mlの間において多いほど良好な凝集成績および大きな凝集物を示した。また、これらの現象に合わせて、凝集剤(混合液)に発生するゲルの様子も把握でき、粗大ゲルが生じる場合には凝集成績が悪いかもしくは測定できないことがわかった。 以上のように、2020年度は研究目標のうち、前半の「調製条件の検討」を総合的に終えることができ、次段階のために必要な基礎データを網羅できたといえる。このことから、2020年度は予定通り、進行できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の結果を受け、今後は本研究の次段階である「一液型化およびその凝集性能発現のメカニズムの解明」に取り組む。申請時から内容および方針において変更点はなく、原料の性状の分析と、その凝集性能との比較を進める。 具体的には、原料アルギン酸の性状(分子量、M/G比、GG含量)がアルギン酸ミクロゲル(凝集 剤)の凝集性能に及ぼす影響を調べる。まず、異なる分子量のアルギン酸を得るために、アルギン酸を熱分解、酸加水分解、アルカリ加水分解などの手法によって条件を変えて低分子量化し、得られる分解物をゲルろ過クロマトグラフィーにより、分子量ごとに分画する。次いで、それぞれの画分について、分子量測定(ゲルろ過クロマトグラフィー)、M/G比(NMR)、GG含量(NMR)を測定する。それぞれの画分を①で決定した手法によって凝集剤とし、凝集性能を評価するとともに、粒度分布を調べる。分子量に対するM/G比またはGG含量を、凝集効果(懸濁物除去率)を面積とした円でプロットし、凝集剤添加量および塩化カルシウム使用量に即して並べる。これらの結果から、懸濁汚水の凝集のためにアルギン酸ミクロゲル中のエッグボックス構造(GG含量に相当)がどの程度必要か、必要性の有無、ゲルサイズは凝集対象となる懸濁粒子の凝集に影響するのかどうか(架橋に必要な直径があるか)などを分析し、凝集機構を明らかにする。
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