2021 Fiscal Year Research-status Report
ナノ多孔質電極を用いた多成分電解質からのイオン種の分離
Project/Area Number |
20K12249
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
清原 健司 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (30344188)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 選択的イオン吸着 / 多孔質電極 / 分子シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、細孔径が1ナノメートル程度の多孔質電極による電気化学的吸着によって、多成分電解質水溶液から特定のイオンを選択的に吸着することを目指すものである。研究手法としては、分子シミュレーションによる理論的予測および吸着メカニズムの解明と、電気化学実験による実証の二つを用いる。 前年度に引き続き、分子シミュレーションにより、電解質水溶液中のカチオンが炭素材料でできた多孔質電極に電気化学的に吸着される際に越えなければならない自由エネルギーバリアを計算した。本年度はカチオン種としては、一価、二価に加えて三価のさまざまなイオン種を用い、アニオン種は塩化物イオンに統一した。多孔質電極としてはスリット状のものを用い、細孔径としては細孔の両側の炭素原子の中心の距離で6Åから12Åのものを用いた。 電極の細孔や電極へ印加する電圧の違いに応じた自由エネルギーバリアの変化は、特に価数ごとに特徴的な振る舞いを示した。電圧印加時の自由エネルギーバリアの大きさは、細孔径が8Åと小さい場合には、印加電圧によらず価数が大きくなるほど大きくなり、一方細孔径が9Å以上では、印加電圧が小さい場合は(一価)<(二価)<(三価)となるが印加電圧が大きくなると(二価)<(三価)<(一価)となる傾向が見られた。イオンの価数が大きくなるほど、水和殻が外れにくくなり、一方で電極との静電相互作用は強くなる。前者の効果はイオンが電極の細孔に吸着されにくい方向へ、後者の効果は吸着されやすい方向へ働く。イオン種による電極への吸着されやすさの違いは、これらのバランスで決まることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
分子シミュレーションによる計算においては、イオンが電極へ吸着される際に越えなければならない自由エネルギーバリアの大きさを、一価、二価、三価のさまざまなイオン種について、電極の細孔径および印加電圧の関数として評価した。この中で、それぞれのイオン種が多孔質電極に吸着のされるメカニズムの概略を理解することができた。よって、計算科学的研究は概ね順調に進んでいる。一方で、実験的検証においては、ある程度のデータは得られているが、さまざまな要因により、一定の結論を得るほどのデータが得られていない。よって、実験的研究はやや遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
多孔質電極による多成分電解質水溶液から特定のイオンを選択的に吸着することを目指して、計算科学的および実験的研究をさらに進める。 ①これまで行ってきた個々のイオンの吸着のしやすさの結果を参考にしながら、複数のイオン種を含む電解質水溶液を多孔質電極が接する系について分子シミュレーションを行い、イオン種選択的吸着を検証する。 ②多孔質電極によるイオン種選択的吸着の実験的検証を、これまでに構築した電気化学セルなどを用いて進める。特に、二種類のカチオンが共存する電解質水溶液からのイオン種選択的吸着について調べる。
|
Causes of Carryover |
予定していた学会参加のための旅費を使うことが無く余剰金が生じたため、次年度における外部計算機使用料などに充てることにした。
|