2020 Fiscal Year Research-status Report
Study on antiviral activity of metal oxides with nano-structual surfaces
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20K12251
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Research Institution | Kanagawa Institute of Industrial Sclence and Technology |
Principal Investigator |
砂田 香矢乃 地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所, 光触媒グループ, 研究員(任期有) (20311433)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 章 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (00302795)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 抗ウイルス活性 / 金属酸化物 / モリブデン酸化物 / 表面構造 / 可視光応答型光触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在の新型コロナウイルスによるパンデミックは、世界中で大きな社会問題となっているが、新型コロナウイルスだけでなく、他のウイルスや細菌による感染リスクは、常に生活環境に存在している。そのため、接触感染や飛沫感染のリスクを低減することは、感染症対策の一つとして重要であり、それに伴い活性の高い持続性のある抗ウイルス材料が求められている。これまでに、暗所でモリブデン酸化物であるMoO3やMoO2単独、並びにそれらモリブデン酸化物と酸化チタン光触媒を組み合わせた材料(Mo/TiO2)が可視光下で高い抗ウイルス活性をもつことを明らかにしてきた。その抗ウイルス活性は、これまでバクテリオファージ、インフルエンザウイルスやノロウイルス代替のネコカリシウイルスを対象にJISやISOにある評価方法で活性評価を行ってきたが、今年度は、コロナ禍である社会状況を踏まえ、より実環境に近い状態にあるウイルスに対しての効果を知るために、閉鎖空間であるグローブボックス内にMoO3やMo/TiO2の粉体をそれぞれ担持したガラスサンプルを設置し、そこに対象ウイルスであるバクテリオファージを噴霧し、サンプルにファージを吸着させた状態すなわち実環境でのウイルスの存在状態に近い状態で評価を行った。 結果として、Mo/TiO2に噴霧により吸着させたファージは、暗所下ではほとんど不活化できなかったが、1000 lxの蛍光灯を照射した条件では、99%以上の不活化が認められた。一方で、MoO3では、不活化の効果が見られなかった。これらの結果より、作製した可視光応答光触媒材料であるMo/TiO2は、実環境に存在するウイルスに近い状態のウイルスに対しても、抗ウイルス活性を示し、MoO3のような単独の金属酸化物では得られない抗ウイルス活性をもつことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
抗ウイルス材料を研究対象としているため、今年度は新型コロナウイルスによるパンデミックという社会状況を踏まえ、先の科研費研究での成果である新規に見出した抗ウイルス材料であるモリブデン酸化物やその活性を利用した新規の可視光応答型光触媒材料であるMo/TiO2の抗ウイルス活性を新型コロナウイルス対策に利用できないかということを重きに置き、これらの材料の新型コロナウイルスに対する効果検証や、より実環境に近い状態のウイルスを対象に抗ウイルス活性を評価することを行った。また、これらの材料を製品実用化しようと、企業との共同研究を行い、その開発された製品の抗ウイルス活性についての評価を行ってきた。 以上のような研究を行っていたため、本来の研究テーマであったモリブデン酸化物やMo/TiO2材料の表面構造が抗ウイルス活性にどのような効果をもたらすかについての研究は、ほとんど行えなかった。そのため、研究は遅れているという判断を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍にある現在、抗ウイルス材料を作製している一人として、やはり世の中に役に立ちたいという思いから、先の科研費研究で見出した新規のモリブデン酸化物の抗ウイルス活性と、それを使った可視光応答型光触媒材料であるMo/TiO2の材料を、より活性の高い抗ウイルス材料にヴァージョンアップさせることを目標として、その一つの手段として研究テーマである表面構造を持たせた材料を作製することを行っていきたい。表面構造が有用な手段でない場合は、研究計画を変更し、他の方法も検討することも視野に入れたい。 昨年度から本来の業務に時間を取られて、科研費研究のエフォートがなかなか確保できない課題を抱えているが、一定の時間を確保するように心がけ、研究を進めていきたいと考えている。
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