2021 Fiscal Year Research-status Report
河川を利用する鳥類の季節移動と遺伝的集団構造の両方からみた国内河川の連結性の検討
Project/Area Number |
20K12255
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
笠原 里恵 信州大学, 学術研究院理学系, 助教 (80791821)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
榮村 奈緒子 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 助教 (10762114)
東 信行 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (40262977)
森本 元 公益財団法人山階鳥類研究所, 自然誌研究室, 研究員 (60468717)
西海 功 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 研究主幹 (90290866)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 渡り経路 / イカルチドリ / 河川 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の河川の砂礫地で繁殖する代表的な鳥類である、イカルチドリとイソシギについて、渡り経路と越冬地、およびそこでの利用環境を明らかにするために、2021年4-6月に、調査地である北海道の十勝川、青森県の平川および長野県の千曲川で繁殖調査と捕獲調査を行い、合計18羽のイカルチドリと2羽のイソシギに色足輪での標識とGPS(PinPoint-10および50)を装着することができた。PinPoint-50は10よりも記録できる地点数が多く、詳細な移動を明らかにできる機種である。また、2020年に装着したうち3個体からGPSを回収することができた。 回収したGPSデータから、イカルチドリは年間を通して河川に依存している可能性が高く、また一部の個体は繁殖地に周年とどまったが、一部の個体は東北から中部地方まで移動していることが示され、季節的な移動距離も個体によって大きく異なることが明らかとなってきた。 併せて2020年までに得られた鹿児島県、青森県、長野県のイカルチドリの血液試料からDNA分析を行ており、間もなくプライマーを確立できる段階である。DNAを用いて遺伝的構造の分析を行う。 2020年に引き続き、新型コロナウィルスの流行状態を鑑みて、いずれの地域においても調査日数は最低限に設定した。また、調査時期に河川の増水が生じるなど、北海道のイカルチドリとイソシギ、また他地域のイソシギについては、血液試料を得ることが難しかった。したがって、北海道での2種の調査および各地域でのイソシギの調査については2022年に引き継いで行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
GPSを用いたイカルチドリの移動経路調査は概ね予定通りに進んでおり、地域間の交流が見えてきた状態である。ただし、イソシギについては、研究期間内のGPSの装着、回収が難しい状況であり、移動経路の調査についてはイカルチドリを中心にまとめることを予定している。 DNA分析はプライマーの設計に半年以上かかっており、遺伝的構造の分析に遅れが生じている。また、イカルチドリにおいては北海道を除いて十分な血液試料数が得られているが、イソシギについては、長野県と青森県でかろうじて血液試料が得られているだけであり、他の地域では得られていない状況である。このため、やや遅れている、とした。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、新型コロナウィルスの流行状況を鑑みながら、北海道でのイカルチドリおよびイソシギの血液採取を試み、ほか3地域と併せて遺伝子解析を実施する。併せて、2020-21年度に青森県、長野県においてGPSを装着した個体のうち、繁殖地に帰還した個体からGPSの回収を行い、渡り経路について明らかにする。イソシギについては、GPSの装着と回収は期間内に難しいと判断しており、遺伝子解析を中心に進める予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの流行を鑑み、北海道での調査を見合わせたため、翌年への繰り越し金が発生した。この金額については、2022年度の状況を伺いながら野外調査のための旅費として使用予定である。
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