2020 Fiscal Year Research-status Report
Multi-site comparsion in communities and functions of pollinator insects toward conservation of wetland ecosystems
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20K12257
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
保坂 哲朗 広島大学, 先進理工系科学研究科(国), 准教授 (50626190)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丑丸 敦史 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (70399327)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 植物―昆虫相互作用 / 送粉生態学 / 湿地生態系 / 生物多様性保全 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請課題では、島根県・広島県に点在する湿地群に生育する多様な植物種を対象に、その送粉昆虫群集の網羅的な解明および周辺環境の違いによる送粉昆虫群集や送粉成功度の違いを明らかにすることを目的とするものである。初年度である2020年度は、まず研究対象地の選定を行い、島根県飯南町の赤名湿地および広島県北広島町の八幡湿原群を本研究課題における主な研究対象地とした。両調査地とも、絶滅危惧種を含む多くの湿原性植物が生育する豊かな湿地生態系が残っており、国・県・町などの保全地域に指定されているため、関係機関から調査許可を取得した。 赤名湿地においては、直接観察(サンプリング個体数約1000個体)のほかに10台以上のインターバルカメラによる昼夜の自動撮影(撮影枚数約30万枚)も行うことで、約40種の植物の送粉昆虫を記録した。その結果、他の湿地での報告と同様に、赤名湿地においても双翅目の訪花頻度が高く、双翅目が重要な送粉者と考えられる植物種が多いことが分かった。各植物種の花形質の測定も行い、ハナバチは青色で筒型、双翅目は白色や黄色で皿型の花へ有意に多く訪花していることも明らかになった。また、日中と夜間を比べると、ほとんどの植物で日中の昆虫訪花頻度が圧倒的に高いものの、ヒメシロネなど3種は大半が夜間の蛾であった。タヌキモ属のミミカキグサとムラサキミミカキグサなど、日中・夜間ともに訪花昆虫が確認されなかった種もあった。 これらの成果は第52回種生物学会や第68回日本生態学会などで発表した。また、現在投稿論文を準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は新型コロナウィルス感染症の拡大の影響で、必要器材の購入や出張がままならず、調査開始は予定よりも遅れてしまったが、予定していた調査地の選定および調査許可の取得は完了することができた。また、広範な湿地性植物種の送粉昆虫調査を直接観察および自動撮影カメラによって行うことができた。捕獲した昆虫の同定や自動撮影カメラで撮影された昆虫の同定に関しては、複数の協力者の支援によって、予定よりも早く完了することができた。一方で、調査開始が遅れたため、昆虫の体表付着花粉の計数などを行ことはできなかった。 これらのデータについては、解析を行い、種生物学会および生態学会で発表を行った。現在これらの発表内容について2-3本の論文として準備中であり、全体としてはおおむね順調に進捗しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度以降は本研究課題の核心でもある「湿地や湿地周辺の環境変化はどのように送粉昆虫群集に影響し、送粉成功度に影響するのか」という問いに答えるため、20-30ヶ所の様々な面積・周辺環境をもつ湿地を対象に、送粉昆虫の一斉調査を行う。送粉昆虫は捕獲し、体表付着花粉数を定量化し、送粉における重要度を評価する。また、いくつかの対象植物種に関しては、送粉成功度の指標として柱頭付着花粉数や結実率を定量化する。これらのデータを解析して上記問いに答えることで、送粉生態系を考慮した湿原や周辺環境の保全に対する提案を行う。成果は論文や学会発表として公表するとともに、市民や小中高生への生態学・環境教育などに積極的に活用する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響により調査が予定よりもできなかったため、物品購入や旅費の支出が少なかった。次年度以降はこれらの調査も行う予定であるため、順次予定通り執行されていく見込みである。
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