2021 Fiscal Year Research-status Report
Environmental DNA biobanking: trans-kingdom parallel analysis of eDNA from fauna/flora to microbiota including pathogens
Project/Area Number |
20K12258
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
佐藤 行人 琉球大学, 医学部, 講師 (20566418)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 環境DNA / バイオバンキング / メタバーコーディング / 病原体 / 生物相 / 次世代シークエンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、病原体を含む微生物から、四足類や甲殻類などを含む動植物まで幅広い分類群を対象とした環境DNA分析(=トランスキングダムな解析)について、手法開発と実施を進めることが主眼である。モデル地域として、沖縄県の南部都市部と北部やんばるに注目し、取得される環境DNA生物相情報を比較解析することで、生物相や病原体の分布、種多様性、遺伝的多様性、人間活動・都市環境パラメータとの相関などを分析し、その時系列研究を行う基盤の構築を試みることが目的である。初年度は、北部やんばるでのサンプリングルートの確立と実施、南部都市部でのルート検討を行った。前者については、およそ全域をカバーする13か所の主要水系を1日半で周回しサンプルリングするルートを確立できた。また2年目は、沖縄本島南部の都市部についてサンプリングポイントとルートの検討を行い、作業用マップの作成から、実際の環境DNA分析までを実施することが出来た。県が実施する河川水質調査の結果を参考に、まずはBOD75%値(水質汚染の指標値の1つ)が比較的高い報得川、雄樋川、安里川を対象として、合計17箇所のサンプリングポイントを定めて分析を行った。これらのポイントには、ダム湖下流、汚水処理場の上流および下流、牛舎・豚舎の上流および下流などといった、微生物・病原体分布、動物およびヒトDNAの含有、人間活動や地域衛生などを考える上で重要となる比較点が含まれるよう考慮している。分析の結果から、県南部都市河川における細菌叢、病原体分布、産業活動からの細菌叢負荷などに関する予備的知見を得ることが出来た。本年度も、サンプリングポイントおよびサンプリングを増強することで、これらの解析を研究成果へと発展させていく予定である。また、開発した手法を西表島へと適用した成果について、国際誌に論文発表を行うことが出来た(米国時間での出版日2022年3月31日)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の申請時に計画した内容について、環境DNAサンプルのサンプリングポイント数については、沖縄県北部やんばるおよび県南部について目標のおよそ75%を達成し、さらにサンプリングを追加していける段階に来た。2021年度は、新型コロナウィルスの流行状況により県内出張を控えざるをえない時期が続いたため、県北部のサンプリングポイントの増強については、予定よりも達成数が下回っている。しかしながら、当年度は南部都市部についてサンプリングルートの設定から実際の環境DNA分析までを実施することが出来たため、2年目時点ででの達成度としては、おおむね順調であると考えた。バクテリアから動植物まで同時検出して相関解析を行う環境DNA手法の開発では、病原体の細菌レプトスピラと、その宿主動物となりうる脊椎動物(哺乳類、鳥類など)を解析する手法を確立し、新たに世界遺産登録された西表島(ユツン川、ウダラ川、アヤンダ川)へと適用した。その成果は、当該分野のトップジャーナルの1つである PLOS Neglected Tropical Diseases に、第一著者および責任著者として論文を発表することが出来た(Sato, et al. 2022. PLOS Neglected Tropical Diseases, 16, e0010234.)。以上より、研究の実施および成果発表の両面において、比較的順調に進展していると考えた。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度(2022年度)の推進方策として、まず環境DNAのサンプリングについては、新型コロナウィルスの感染状況を鑑みながら、可能な範囲で増強を行っていく予定である。とくに、沖縄県南部都市部については、2021年度冬季にサンプリングした地点と同じ場所で、夏季にもサンプリングを行うことで、季節間の比較および結果の再現性の確認を行う予定である。また、得られる成果についての論文化も検討している。可能であれば、沖縄県北部やんばるでのサンプリングも増強することで、沖縄県をモデルとした環境DNAバイオバンキングをさらに進める予定である。トランスキングダムな環境DNA解析の手法開発面では、とくに西表島のサンプルを用いて、甲殻類、魚類、微生物の検出をすでに試行し、同島におけるテナガエビの分布や種多様性などに関する知見を得られてきている。これをさらに推進し、論文化を進める予定である。さらに、沖縄本島ですでに入手したサンプルを活用し、植物、病原体(Coxiella やヘリコバクターピロリ菌などを含む)、薬剤耐性菌(薬剤耐性遺伝子、薬剤耐性プラスミドも含む)の検出について、PCRプライマーや増幅条件の検討、次世代DNAシークエンシング、データ解析プログラムの作成を進めていく予定である。
|