2020 Fiscal Year Research-status Report
Evaluation of carbon sequestration mechanism and potential by mangrove afforestation/reforestation
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20K12261
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
酒井 裕司 工学院大学, 先進工学部, 准教授 (40361513)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マングローブ / 植林/再植林 / 原生林 / 土壌炭素 / バイオマス / 炭素貯留量 / ブルーカーボン / 温暖化対策技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、タイ南部におけるエビ養殖放棄池でのマングローブ再植林地域、同地区での沿岸域における新規マングローブ植林地域、及び原生林植生地域での炭素貯留量を比較評価することが目的の一つである。研究計画では、今年度、エビ養殖放棄池でのマングローブ再植林地域における土壌、地上部・地下部バイオマス及び植生評価などの現地調査を行う予定であったが、新型コロナウイルス感染症での入国制限措置により調査を実施することが不可能であった。そのため、以前調査したマングローブ再植林及び新規マングローブ植林地域における植林経過年数の異なる試験区を対象として、土壌中炭素・窒素含有量や土壌特性の測定及び炭素貯留量におけるデータ精度の向上を図った。 また、本研究では、マングローブ土壌中の高い炭素貯留能に起因する土壌特性との関係性を評価することも目的としている。そこで、マングローブ植林/再植林及び原生林土壌における炭素含有量とpH、EC、Na含有量などとの土壌特性との関係性を評価し、土壌炭素貯留に関係する可能性を確認出来た。また、土壌中炭素動態の解析のために形態別炭素の測定方法を調査して適用可能性を評価した。さらに新たな炭素貯留能に起因する土壌特性評価のため、リンやマンガンなどの測定方法についても検討した。 さらに、エビ養殖放棄池及び新規土壌堆積地域へのマングローブ再植林及び植林による温暖化対策技術としての評価手法の確立と評価を行うことも重要な目的である。そこで、エビ養殖放棄池での養殖実施前後での植生、伐採、温暖化に関係する土壌環境変化に関するデータ調査及び再植林実施に関係するデータ収集を行った。そして、新規土壌堆積地域へのマングローブ植林の実施の場合も併せて、対象地域での植林及び再植林による温暖化対策技術としての評価手法の検討と関連するデータ資料を収集後、整理を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
タイ南部マングローブ植生地域における炭素貯留量及びメカニズムに関する評価では、新型コロナウイルス感染症による入国制限措置のため、今年度計画していた既往の研究調査地より植生年数の経過した試験区での調査を実施出来なかった。そのため、以前調査したマングローブ再植林及び新規植林地における植林経過年数の異なる土壌を対象として、土壌中炭素・窒素含有量及び土壌特性におけるデータ精度の向上と解析を進めた。その結果、エビ養殖放棄池での再植林試験区において、植林後18年までの年数経過に伴う土壌及び地上部・地下部バイオマス中による炭素貯留量の増加を確認出来た。さらに、植林経過後18年までの調査結果に基づいた地上部及び地下部バイオマスのアロメトリー式を導出した。その他、土壌炭素貯留量と他の土壌特性との関係性評価のため、pH、EC、Na含有量、酸化還元電位以外にも、リンとマンガンの含有量を簡易的に行い、炭素含有量との関係性を確認出来た。また、土壌中形態別炭素測定では簡易的な手法で検討したが、追加機器の必要性から再検討することにした。 次に、エビ養殖放棄池及び新規土壌堆積地域へのマングローブ再植林及び新規植林実施による温暖化対策技術としての評価手法の確立と評価を行うため、今年度は、エビ養殖放棄池伐採前後の温暖化対策技術評価に必要な関連データ収集及び解析方法の検討を行った。エビ養殖池設置(伐採時含む)、伐採前後の排出ガスに関係する評価データなどの調査と収集、及び植林作業に関連するデータ収集と評価方法の検討も行った。 以上より、現地調査は出来なかったが、既存採取試料でのデータ精度の向上と解析を進めることが出来、さらに、当初計画していた炭素貯留能に関係する土壌特性と測定方法の検討及びマングローブ植林・再植林実施における温暖化対策技術としての評価に関係する研究内容を当初の計画より先行して進めることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究での対象試験区であるタイ南部のエビ養殖放棄池でのマングローブ再植林地域、同地区での沿岸域における新規マングローブ植林地域、及び原生林地域における現地での土壌及びバイオマス関係の調査は、入国制限措置が解除され、安全な海外渡航調査の実施が可能な状態になり次第、行う予定である。その際の調査場所としては、当初計画していた既往の研究調査よりも植林後の年数が経過したマングローブ植生地における土壌採取及びバイオマス生育調査を実施する予定である。また、調査時に必要な測定及び解析機器関連のメンテナンスや準備も開始する。今後も、タイ南部の研究対象地域での調査実施前までは、以前調査した同地域でのマングローブ植林試験区における採取土壌にて、炭素貯留量及び炭素貯留メカニズムに関係する評価の測定及び解析を実行する。現段階において、昨年度の現地調査が実施出来なかったことから、研究期間の延長を予定している。また、今後も長期間、海外渡航禁止の状態が継続する場合には、日本国内でのマングローブ植生地域の調査にて、土壌中炭素貯留メカニズムの検討評価の実施の可能性も検討する予定である。 次に、マングローブ植生地域における土壌中の高い炭素貯留能に起因するメカニズムに関係する土壌特性の評価では、現在検討している形態別炭素、リン、マンガンにおける精確な定量分析方法の確立後、形態別鉄についても新規に検討を開始する予定である。 そして、マングローブ植林及び再植林の温暖化対策技術としての可能性評価に関しては、新規堆積土壌地域及びエビ養殖放棄池地域での植林作業に関係するデータ収集及び解析を行う。引き続き、エビ養殖放棄池での伐採前後に適した評価手法の検討を行い、導入シナリオなどについても検討を行う。 また、本研究において得られた新たな研究成果については、国内外での関連学会などで報告する予定である。
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Causes of Carryover |
研究実施対象国であるタイにおける新型コロナウイルス感染症による入国制限措置により、当初計画していたマングローブ植林及び再植林試験区での研究調査を実施することが出来なかったため、次年度に現地調査を延期するよう計画している。 今後、タイ南部のエビ養殖放棄池でのマングローブ再植林地域、同地区での沿岸域における新規マングローブ植林地域、及び原生林地域における現地での土壌及びバイオマス関係の調査は、入国制限措置が解除され、安全な海外渡航調査の実施が可能な状態になり次第、行う予定である。
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Research Products
(3 results)