2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of gas uptake performance of clathrate hydrates for storage of low-carbon resources using natural cold energy
Project/Area Number |
20K12269
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Research Institution | Kitami Institute of Technology |
Principal Investigator |
木田 真人 北見工業大学, 工学部, 准教授 (90635814)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | クラスレートハイドレート / 自然冷熱 / 低炭素資源 / バイオガス / 天然ガス |
Outline of Annual Research Achievements |
低炭素資源の貯蔵・精製媒体として、自然冷熱を利用して生成可能なクラスレートハイドレート(CH)を活用するための原理の解明を行うため、令和2年度に引き続き、所定組成のメタン-CO2混合ガスとCHを接触させる気固反応により、CH結晶中にどのようにメタンとCO2が包蔵されるかを調査した。 令和2年度に調査したテトラブチルアンモニウムフルオリドハイドレート(TBAFh)およびテトラブチルアンモニウムクロリドハイドレート(TBACh)の2種類のCHに加え、令和3年度は、テトラブチルアンモニウムブロミドハイドレート(TBABh)を対象とし、そのガス包蔵特性を-20~+5℃の温度範囲における2つの初期圧力条件で評価した。その結果、TBABhは、いずれの温度においてもCO2を選択的に取り込み、CO2のTBABhへの取込みが、メタンのそれより熱力学的に安定であることを示唆した。また、低圧の方が高圧よりメタンとCO2の包接の競合が小さく、CO2分離性能が高くなることが明らかになった。さらに、高圧では、接触温度によらず概ね一定のCO2分離性能を示すが、低圧にすることで低温域におけるCO2分離性能が向上することが明らかになった。 また、分光学的手法を用いて、メタンおよびCO2分子がCHの持つ空きケージに包蔵されていることを直接観測することができた。 さらに、ガスを包蔵したCHの安定性を解明するため、単一のメタンおよびCO2を気相とする各系の相平衡曲線図の取得を行った。令和3年度は、TBAFhを対象とした。TBAFh系の相平衡曲線は、温度一定の下では、気液系でメタンの方がCO2がよりTBAFhに取り込まれやすいことを示唆した。これは、気固系と気液系でメタンとCO2のCHに対する熱力学的安定性が逆転することを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自然冷熱を利用して扱うことのできるCH結晶とメタン-CO2混合ガスの気固接触におけるCHのガス分離特性の調査の対象を計3種類のCHまで拡大したことにより、第4級アンモニウム塩系の分子をゲスト分子とするCHにおいて、CHの種類がガス分離特性に及ぼす影響を系統的に明らかにすることができた。 当初は、メタン/CO2包蔵CHの安定性を解明するため、気固系におけるCHの平衡条件をCHの分解挙動を評価することにより直接測定し、ガス包蔵CHの熱力学的安定性を評価する予定であった。しかし、気固系において、CH分解時のガス放出速度が非常に長いことが判明し、直接気固系の相平衡条件を測定するには、多大な時間を要することがわかった。そこで、比較的短時間で得られる気液系の相平衡条件を測定し、その平衡曲線を気固系に外挿することにより、間接的に気固系におけるガス包蔵CHの安定性の解明を試みることとした。得られた相平衡曲線と、混合ガスのガス分離実験におけるガス組成変化およびガス吸収量の初期圧力依存性を解析することにより、各気相成分のCHへの取込駆動力がメタンおよびCO2の固定に及ぼす影響を明らかにすることができた。また、TBAFhの気固接触では、気液系で熱力学的に不安定なCO2がより選択的にCH結晶中に取り込まれることがわかり、固体結晶へのガスの拡散が影響していることが示唆され、メタンおよびCO2の固定メカニズムに関する知見が得られつつある。 以上の通り、当初検討していた熱力学的安定性の評価手法を修正することで、全体としては、当初の予定通りにおおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
調査の対象を計3種類のCHまで拡大したことにより、第4級アンモニウム塩系CHのガス分離特性を系統的に明らかにすることができ、論文投稿を前に特許出願を行った。今後、得られた成果をとりまとめ論文投稿する予定である。令和4年度は、ガス包蔵CHの安定性の解明を続け、さらに自然冷熱の利用を見据え、温度変動場がガス貯蔵、分離性能等へ及ぼす影響を評価する。
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