2021 Fiscal Year Research-status Report
地熱発電具現化のためのアンチスケーリング法開発を目的としたロータス効果の応用展開
Project/Area Number |
20K12275
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Research Institution | Tokyo National College of Technology |
Principal Investigator |
小山 幸平 東京工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (40597845)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | スケール / 温泉水 / 再生可能エネルギー / 接触角 / 液滴 / ピン止め効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
地球温暖化や大気汚染などの環境問題は、持続可能な社会を構築するために人類が避けては通れない課題である。我が国は温泉大国であり、世界有数の地熱資源量を誇ることから、本研究では非化石エネルギーのうち、再生可能エネルギーのひとつである温泉水を利用する地熱発電に着目する。 地熱発電導入量が少ない要因のひとつに、熱水運搬中のスケール付着がある。スケールとは、温泉水や地熱発電で用いられる熱水に含まれる、炭酸カルシウムや硫黄といった含有成分が析出し沈殿したもののことである。スケールは地下から湧出する過程で容易に析出し、配管内壁や熱交換器内に付着し、配管の狭窄や熱交換効率の低下を引き起こす。そのため定期的な除去や配管の交換が必要である。 本年度の目的は、接触角の測定に基づくロータス効果の定量評価を行うことである。材料表面に単一の微細円柱形状を有する試料を作成し、これに対して水滴を滴下し、接触角測定器を用いて加工面の接触角を測定した。出られたデータに基づきロータス効果が試料表面に滴下した液滴の静的特性を評価した。 その結果、ロータス効果に加え、従来は想定していなかったピン止め効果の影響が表れていることを見出した。そこで特に試料形状をパラメーターとして実験を行い、ピン止め効果が見られる条件下での実験に注力した。得られた接触角から液滴に生じるピン止め力を算出し、試料である微細円柱形状をパラメーターとして整理した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ステンレス板表面に微細な円柱形状の加工を行い、実験試料とした。様々な円柱半径を有する試料を作成するとともに、円錐形状や逆円錐形状の試料も作成したことで、幅広い条件下での実験が可能となった。実験では、試料表面に水滴を滴下し、その接触角を測定することで、スケール付着に影響するとみられるロータス効果の評価を行った。 実験の結果、従来はロータス効果の影響を主に想定していたが、新たにピン止め効果の影響を詳細に考慮する必要性が見いだされた。ピン止め効果により試料に滴下した水滴が微細円柱上に留まり、表面張力のため球形を保ち、撥水性と類似の現象が見られた。試料として用いた円柱形状によって発生するピン止め力が異なることを見出し、現象を実験式として整理することができた。新たな視点からデータの分析を行うことができ、研究を深化させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の計画 試料材料の影響に対する実験:ここまでは試料としてステンレスのみを使用してきたが、実用への応用を考慮した際、単一の材料に対するデータのみでは不十分である。そのため、複数の材料に対する実験を行い、ロータス効果およびピン止め効果に対する更なる知見を得る。 スケール付着防止メカニズムの解明:試料表面の詳細な光学顕微鏡観察を行い、スケール付着防止に至るメカニズムを解明する。これと並行し、実際の地下熱水利用設備を想定した実験を進める。ロータス効果を有する材料を懸濁液に長期間浸漬させ、実際の設備を想定した長期間使用に対するスケール付着防止特性を評価する。その結果から、多様な不純物を含む温泉水などに耐久性がある材料などへの加工性や管内への加工法などの提言を行う。
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Causes of Carryover |
研究当初は主にロータス効果を想定していたが、研究の結果、新たにピン止め効果の影響を見出し、この点に着目した実験を推進することで、研究全体が効果的に進むと判断した。次年度は、異なる試料用材料による実験を行い、これまでに得られたデータと合わせて研究を深化させ、取りまとめる。
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