2021 Fiscal Year Research-status Report
Mutual Supportiveness between Carbon and Trade Policy, and Role of Agricultural Sector
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20K12291
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
伴 ひかり 神戸学院大学, 経済学部, 教授 (70248102)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤川 清史 愛知学院大学, 経済学部, 教授 (60190013)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 排出量取引 / 貿易自由化 / 農業 / CO2排出量 / 応用一般均衡分析 / 産業連関分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
主として,排出量取引における農業分野の役割と貿易政策の経済及び環境への影響についての研究を行った. 排出量取引における農業分野の役割については,まず,日本の排出量取引制度と農業分野について検討した.日本の排出量取引制度について,自主参加型国内排出量取引制度(JVETS),排出量取引の国内統合市場の試行的実施,国内クレジット制度,オフセット・クレジット(J-VER)制度,東京都と埼玉県の排出量取引制度,J-クレジット制度について調べ,農業分野の扱いと実態について明らかにした.また,比較のため,ニュージーランドの排出量取引における農業分野の役割についても調べ,それも含めて「日本の農業分野と排出量取引制度」として公刊した. また,,排出量取引における農業分野の参加の役割について,経済活動とエネルギー及び環境(CO2排出量)をリンクさせた応用一般均衡モデルの1つであるTruong版のGTAP-Eモデルと2014年グローバル経済対応のGTAP Database10Aを用いて分析を試みた.現状維持であっても農業部門が排出量取引に参加することによって経済への負荷を軽減できる可能性を示した. 貿易政策の環境への影響における農業分野の役割に関して,上述のGTAP-Eモデルとデータを用いて検討した.具体的には,日中韓の関税撤廃の経済・環境効果を,農林水産物を含める場合と含めない場合で比較した.日本と韓国ではすべての品目の関税を撤廃する完全撤廃の方が農林水産物を関税撤廃の対象外とする部分的撤廃よりGDPもCO2も僅かであるが増加するが,中国では逆に減少する.等価変分で測ると,日本と中国は完全撤廃の方が部分撤廃より経済厚生は増加するが,韓国では逆に減少する.また,世界全体のCO2排出量は完全撤廃の方が多くなる.このように,貿易政策の経済・環境効果における農業の役割は国によって異なることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
排出量取引や貿易政策における農業分野の役割についての分析と考察がある程度できた.また,CO2以外の温室効果ガスデータの収集も進み,次年度の研究の準備が順調にできた.
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Strategy for Future Research Activity |
応用一般均衡モデルを用いた農業分野の排出量取引における役割についての分析を,パリ協定を想定したシナリオ分析に発展させる.それを通して,これまでの研究で見出してきた,グローバルな低炭素政策における先進国と発展途上国,エネルギー輸出国と輸入国といった対立軸に加え,農産品の輸出国と輸入国の視点を加える.できれば,CO2以外の温室効果ガスの排出についても分析できるようモデルを構築したい.そのために,温室効果ガスの排出と土地利用について,収集したデータを用いて現状を把握することから始める. 貿易政策と環境負荷については,RCEPやTPPなどの枠組みでのシナリオを追加した上で2021年度の研究を完成させ論文の形で公表する.また,現行の研究は静学モデルを用いた研究であるので,動学モデルを用いた研究に拡張し,より長期的な影響や時間の経過とともに生じる変化も検討したい. 炭素政策及び貿易政策の結果,付加価値構造,貿易構造,環境負荷構造などがどのように変化するかを,シミュレーション前後のデータから国際産業連関表を作成し,産業連関分析の手法を用いて分析する.それにより炭素政策と貿易政策の相互支持性について,一層深い考察を試みる.
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Causes of Carryover |
Covid19の影響で,海外での学会報告や調査が行えなかったことが主な理由である.次年度の関連図書やデータベースの購入,英文校閲費などに補てんしたい.
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Research Products
(10 results)