2022 Fiscal Year Research-status Report
Mutual Supportiveness between Carbon and Trade Policy, and Role of Agricultural Sector
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20K12291
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
伴 ひかり 神戸学院大学, 経済学部, 教授 (70248102)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤川 清史 愛知学院大学, 経済学部, 教授 (60190013)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 排出量取引 / 貿易自由化 / 農業 / CO2排出量 / 応用一般均衡分析 / 産業連関分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究は大きく分けると2つである.1つは炭素削減政策における農業部門の役割で,もう1つは貿易政策の環境負荷における農業部門の役割である. 炭素削減政策における農業分野の役割についての分析については,経済活動とエネルギー及びCO2排出量をリンクさせた応用一般均衡モデルの1つであるGTAP-Eモデルと2014年グローバル経済対応のGTAP Database10Aを用いて,中国の国内排出量取引の経済・環境効果を分析した. 中国で排出量取引が計画されている8部門で20%削減するシナリオⅠと,8部門は20%削減,及び他の部門は現状維持の制約の下,排出量取引を行うシナリオⅡを比較した.シナリオⅠでの炭素価格は16.98ドル/ton-C,GDP成長率は-0.25%,シナリオⅡの炭素価格は12.64ドル/ton-C,GDP成長率は-0.22%である.つまり,今回のシナリオでは農業部門が排出量取引に参加することによって経済負荷を軽減し,また,炭素削減政策の下でも農業部門の生産量が増加しうることを示した. 貿易政策の経済・環境効果における農業分野の役割に関して,上述のモデルとデータを用いて検討した.具体的には,日本,中国,韓国,ASEAN,オセアニアの間で農業部門の関税を撤廃するシミュレーションを行った. 農業部門の生産量の変化は,オセアニア4.02%,中国2.07%,日本-2.53%,韓国-22.68%,ASEAN-0.01%であり,農業部門のCO2排出量の変化は,オセアニア4.59%,中国2.58%,日本-2.91%,韓国-27.34%,ASEAN-0.03%である.貿易政策の経済・環境効果における農業の役割は国によって異なることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
データの準備に時間がかかり,モデルが作動するのが予定より遅れてしまい,論文として公表することができなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の分析は中国の国内排出量取引を対象としたが,シナリオ分析をパリ協定を想定した国際排出量取引に拡張する.グローバルな炭素削減政策の経済・環境効果を,先進国と発展途上国,エネルギー輸出国と輸入国,農産品の輸出国と輸入国といった複合的な視点からとらえる. 貿易政策と環境負荷における農業部門の役割については,日中韓,RCEP,TPPなどの枠組みでのシナリオ分析の結果をまとめ,論文の形で公表する.また,現行の研究はCO2のみを対象としているが,CO2以外の温室効果ガスの排出についても分析できるようモデルを構築する. 炭素削減政策及び貿易政策によって,付加価値構造,貿易構造,環境負荷構造がどのように変化するかを,産業連関分析の手法を用いて分析する.そうすることによって炭素削減政策と貿易政策の相互支持性について,一層深い考察を試みる.
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Causes of Carryover |
Covid19の影響で,海外での学会報告や調査が行えなかったことが主な理由である.次年度の学会報告の旅費,関連図書やデータベースの購入,英文校閲費などに補てんしたい.
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Research Products
(18 results)