2020 Fiscal Year Research-status Report
日中比較分析による「低炭素パラダイムシフト論」の創出
Project/Area Number |
20K12295
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
李 志東 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (80272871)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 新エネルギー自動車 / リチウムイオン電池 / NEV目標規制・クレジット取引 / 再生可能エネルギー / FIT / 日中比較分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、学習曲線モデルを用いて、日中両国の車載用リチウムイオン電池の価格決定メカニズムに関する比較分析を行った。以下の結論を得た。 ①車載用リチウム電池の価格は電池の累積生産量だけではなく、リチウム価格や電解液価格等の影響をも受ける。累積生産量だけを考慮する従来の学習曲線モデルを改良する必要がある。②累積生産量が2倍になる度に、電池価格は日本で22%低下するが、中国では14%しか低下しない。これは、リチウムイオン電池に関する技術開発能力は日本の方が高いことを意味する。一方、累積生産量の拡大速度は中国の方が日本より高いため、2014年から2018年までの電池価格低下率は、中国が48%で、日本の26%を上回る。量的拡大による価格競争力向上効果は中国の方が高い。③中国が導入している新エネルギー自動車(NEV)目標規制・クレジット取引制度は、NEV普及と電池価格の低下を促していることが確認できた。 次に、中国の太陽光や風力を中心とする再生可能エネルギー電源開発に関する制度的分析を行った。その結果、固定価格買取制度(FIT)を中心とする支援対策が、再生可能エネルギーの普及拡大、産業競争力の向上に大きく寄与したが、電力料金に上乗せする再生可能エネルギー賦課金の高騰等の弊害ももたらしていることが確認できた。また、脱FITに向けて、中国は再生可能エネルギー電力利用目標規制・グリーン証書取引制度を導入し始めたが、その効果について検証する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍の影響により、日中両国における現地調査が殆どできなかったが、電子媒体を中心とする日中の再生可能エネルギーと新エネルギー自動車関連の資料・データ収集が順調に進んでいる。データ解析、定性分析、モデル開発、実証分析も順調に進んでいる。遠隔方式であるが、学会発表も行った。学術論文も発表出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、以下の中心に研究を展開する予定である。
①日中を対象に、風力と太陽光発電、NEV(完成車、動力電池と4大部材を含む)の利用状況、技術力と国際競争力、技術開発動向等を分析し、格差の推移を定量的に把握する。 ②再エネとNEV普及システム関する日中比較分析を行い、影響要因(低炭素戦略、技術開発戦略と体制、法制度、規制や行政措置、財源を考慮する助成措置、広義のカーボンプライシング制度(NEVクレジット取引、再エネグリーン証書取引、炭素排出量取引等)、市場構造と需要規模、知財保護体制など)の抽出と分類を試みるうえで、両国間における取組の共通点と相違点が利用状況と産業競争力にどのように影響しているかを定量的に解明する。 ③上記研究成果を学会発表、学術論文投稿を通じて公開する。
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Causes of Carryover |
令和2年度において、日中での現地調査や(対面式)学会参加の費用を28万円も計上したが、コロナ禍の影響で、現地調査が出来ず、学会もオンライン開催となったため、関連経費が未使用となった。 今年度においては、可能なら、現地調査や対面式学会に参加したい。無理なら、オンラインでの調査や学会参加に切り替える。その場合、旅費は発生しないが、調査協力者への謝金、及び研究協力者への謝金が増える可能性がある。 コロナ禍の下でも、助成金を効率的に利用し、最大限に研究を遂行する予定である。
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