2021 Fiscal Year Research-status Report
Poverty and Community: Lifestyle Diseases for the Poor
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20K12316
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中西 徹 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (30227839)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | フィリピン / 貧困緩和と格差拡大 / 肥満 / 有機農業 / プラント・ベース / ホール・フード / グローバル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
現地調査については,コロナ禍のため,限定的なものにならざるをえなかったものの,昨年同様に,調査対象となる方々の協力を得て,調査地における社会状況についての情報を逐一SNSにおけるチャットと写真によって得ることができた。 また,一週間二度を原則として,オンライン型のインタビューをインフォーマントとその関係者との間で実施してきたものを継続し,相応のデータを収集することはできたものの,個票データの収集は困難であった 以上の状況の下に,これまでの研究結果の中間報告を2度行うと同時に,『現代国際社会と有機農業』という書物の編集に携わり,担当する7章,すなわち,「大分岐」と有機農業(第1章),食と健康(第2章),食と環境(第3章),有機農業小史(第4章),「民衆」が創造する有機農業(第5章),フィリピン:緑の革命から遺伝子革命(第13章),フィリピン:有機農業への道(第14章)を執筆し,2022年度における刊行に向けて準備した。 それは,(1)IFOAMのいうORGANIC 2.0が登場する経緯と背景の議論から出発し,(2) 戦後の農業開発,とくに緑の革命以降,発展途上国における慣行農業の発展がもたらした光と陰を考察し,有機農業のもつ意義をあきらかにする。その上で,(3)グローバル化がもたらした格差拡大に抗するフィリピンにおける農民たちの営みを再検討したものである。 さらに,都市貧困層の健康の動態を考察するための基礎条件については,雑誌『東洋文化』102号において「未来を紡ぐ人々」という論考を発表し,実態調査の条件を含めて40年間の変容について検討した。それは,2022年度以降に,現地の医師とともに行う貧困地区における食と健康の実態調査の前提となるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍のために,本来の計画からは遅れ,しかも前例にない諸要因に配慮せざるを得ない状況となっている。しかし,オンラインによる都市と農村におけるインタビュー調査から,コロナ禍終息後の変容について,当初の研究目的である食と貧困についての新しい視角のヒントを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
この二年間で,フィリピンにおける1990年代以降の食の変化についての背景については,ほぼ検討が終わっている。今後の二年間では,(1)現地の医師とともに,都市貧困地域の人々の食と健康についての分析を行うこと,(2)有機農業の実践を行う米作地帯におけるコロナ禍後の社会変容を解明することを目標とし,(1)によって抽出された問題を解決するための有機農業による処方箋の実現可能性について検討したい。
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Causes of Carryover |
本年度は昨年同様に,当初予定していた対面型現地調査は,コロナ禍のため,実施することができなかった。このため,基本的には,引き続き,文献渉猟に加え,これまでの質的調査結果のタガログ語から英語・日本語の訳を行い,公式データの整理を行った。 このため,支出は,経常的な支出以外には,主にタガログ語から英語への翻訳謝金への使途となった。次年度は,現地の感染状況が現在,落ち着いていることもあり,今年度まで実施することができず,オンライン型調査では補足できなかったデータ収集のための現地対面式調査を集中的に行う予定でいる。
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