2022 Fiscal Year Research-status Report
Poverty and Community: Lifestyle Diseases for the Poor
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20K12316
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中西 徹 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (30227839)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | フィリピン / 貧困緩和と格差拡大 / 肥満 / 有機農業 / プラント・ベース / ホール・フード / グローバル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
貧困緩和と社会発展をコミュニティ・レベルから検討することを意図した対面調査を実施することができた。具体的には,有機農業者,都市貧困層への対面の戸別訪問調査に加え,MASIPAG(NGO),フィリピン稲研究所(PhilRice),フィリピン大学ロス・バニョス校における対面の聞き取りと討論を実施した。また,2020年度以降実施してきたZoomやSNSを活用したオンラインでの面接調査も継続的に行っている。この結果,コロナ禍におけるロックダウンによる移動規制下での農業支援にみられる戦略的なメカニズムなど,興味深い事実があきらかになり,これまでの調査の遅れをある程度まで取り戻すことができた。これらの研究の成果としては,国際開発学会全国大会において「『無用者階級』の『土と健康』を取り戻す:現代国際社会における有機農業の意義」として発表し,さらに『現代国際社会と有機農業』を2023年3月に発行した。また,放送大学の授業やホームページ(https://sites.google.com/view/ouj-organic-agriculture)を通じて,広く一般への研究成果の還元につとめた。 ・中西徹(2022)「『無用者階級』の『土と健康』を取り戻す:現代国際社会における有機農業の意義」『ラウンドテーブル食のレジリエンスとSDGs』,国際開発学会・第33回全国大会,2022年12月4日,明治大学(招待) ・中西徹編(2023)『現代国際社会と有機農業』放送大学出版会,412頁(全15のうち,「課題と視角:『大分岐』と有機農業」,「『食』と健康:『食』の格差から考える」,「『食』と環境:生態系を考える」,「有機農業と慣行農業」,「『民衆』が創造する有機農業:Tei-KeiとPGS」,「フィリピン:『緑の革命』から『遺伝子革命』へ」,「フィリピン:有機農業への道」の7章を執筆)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
貧困緩和と社会発展をコミュニティ・レベルから検討することを意図した対面調査の実施によって,コロナ禍におけるロックダウンによる移動規制下での農業支援にみられる戦略的なメカニズムなど,興味深い事実があきらかになり,これまでの調査の遅れをある程度まで取り戻すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍において実施された物資支援(Ayuda)は,米作農村地域においてはF1種子と化学投入財のパッケージとなっているため,ロックダウンによる既存の販路の制約とあいまって,有機農業の拡大の桎梏となっている。じじつ,調査村では,9世帯の有機農業者が部分的に慣行農法に回帰していた。今後,有機農業組合はどのようにこの事態に対応していくのかについて,検討を進めたい。
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Causes of Carryover |
2020年,2021年に実施予定であった長期の現地調査が,コロナによってできなかったため,この間,次年度使用額が生じている。しかしながら,2022年度には対面調査が可能となり,この間続けているオンラインでの聞き取り調査を踏まえ,2023年度には,インテンシブな調査によって,これまでの遅れを取り戻せることが確認できた。
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