2020 Fiscal Year Research-status Report
ロヒンギャ避難民キャンプの脆弱性とレジリエンスに関する研究
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20K12317
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
日下部 尚徳 立教大学, 異文化コミュニケーション学部, 准教授 (60636976)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉江 あい 名古屋大学, 高等研究院(環境学), 特任助教 (10786023)
大橋 正明 聖心女子大学, 現代教養学部, 教授 (20257273)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ロヒンギャ / 難民 / バングラデシュ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、バングラデシュのロヒンギャ難民キャンプの生活課題と、そこで難民が抱える脆弱性の構成要素を明らかにすることを目的としている。また、難民の生活を大きく左右する当該国政府や国際援助機関のポリシーが難民支援に与えた影響について分析することで、日本が積極的に取り組むロヒンギャ難民支援に寄与する政策的示唆も得たいと考えている。 2020年度は、コロナによってバングラデシュへの渡航が制限されたことから、現地で支援にあたる二国間援助機関や国連、NGO関係者、現地の政府関係者・研究者などによる講演会・研究会をオンラインで計8回開催した。ここでの議論から、関連国・国際援助機関の支援ポリシーがコロナ拡大を経てどのように変化していったのかを明らかにした。 また、バングラデシュのロヒンギャ難民キャンプとオンラインでつなぎ、ロヒンギャ難民の方々にリモートで半構造的インタビュー調査をおこなう取り組みを実験的に実施した。これによりコロナ渦において顕在化した難民の抱える脆弱性およびレジリエンスに関する仮説を形成するに至った。本仮説を次年度以降の調査を通じて検証していくことを予定している。 コロナ禍においては、援助関係者のキャンプ立ち入り制限やワクチン確保といった、研究課題の計画段階では予想できなかった問題が顕在化した。これらはキャンプに暮らす難民の生存可能性を大きく低減させる恐れがあるが、外国人の立ち入りが制限されたことからメディアも難民の声を十分にすくい上げることができていない。そのため、本研究課題の構成メンバーはオンラインでのインタビュー調査を積極的におこない、論文や書籍、一般論考の形で発表することで、キャンプの現状を研究者のみならず一般社会とも共有できるよう努めた。また、研究のアウトリーチ活動として新聞やテレビ、ラジオなどのメディアでも現場の声を反映させた丁寧な解説を心がけた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は、コロナによってバングラデシュへの渡航が制限されたことから、本研究を構成するメンバー全員が現地調査を実施することができなかった。そのため、バングラデシュのロヒンギャ難民キャンプとオンラインツールでつなぎ、現地のロヒンギャ語―ベンガル語通訳を介して、難民の方々にリモートでインタビューをおこなう取り組みをおこなった。リモートによる半構造的インタビュー調査では、誰にインタビューをするのかというサンプリング段階での課題は残るものの、インタビュー自体はスムーズに実施することができた。2021年度においても必要に応じてオンラインによる半構造的インタビュー調査を実施し、研究の確実な遂行を目指したい。 難民の生活を大きく左右する当該国政府や国際援助機関のポリシーが難民支援に与えた影響に関する調査に関しては、関係者へのリモートでのインタビュー調査と援助機関による調査報告書の分析を通じて概ね全体像がつかめることが明らかになったため、次年度以降もリモートでの講演会・研究会を継続していきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
関連国・国際援助機関の支援ポリシーの変遷に関する調査は、2020年度同様、現地で支援にあたる二国間援助機関や国連、NGO関係者、現地の研究者・行政官を招いての講演会・研究会を通じて実施したいと考えている。また、コロナ禍において援助機関が発行した資料や現地の研究者による先行研究を精査し、コロナ前後における難民支援ポリシーの変化を描写・分析する作業を進めたい。 難民の抱える生活課題およびレジリエンスに関する調査は、現地渡航によるフィールドでの半構造的インタビュー調査の実施を目指すが、コロナの状況が改善されない場合には、2020年度に実験的にスタートさせたオンラインによる調査の本格運用を検討する。量的調査に関しては現地の大学などへの委託調査も視野に入れて検討する。 また、研究成果を英文書籍として発表するための校正やベンガル語・日本語・英語間での翻訳作業も進める。
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Causes of Carryover |
バングラデシュへの入国がコロナによって制限されてしまったため、本研究課題を構成するメンバー全員が、現地調査を実施することができなかった。そのため、現地調査のために計上していた旅費や調査に必要な物品購入のための物品費の執行を次年度へ繰り越す結果となった。 現状では2021年度も現地調査が困難になることが予想されるため、2020年度に実施したオンラインでの半構造的インタビュー調査や現地有識者へのインタビュー、現地の大学への委託調査などを検討している。 また、人件費・謝金経費の中で、研究成果を英文書籍として発表するための校正やベンガル語・日本語・英語間での翻訳作業も進める。
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