2021 Fiscal Year Research-status Report
Studies on Ethnicity and Survival Strategies among the Second Generations of Mixed Parentage in the Philippine Muslim Society
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20K12327
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Research Institution | Bunkyo University |
Principal Investigator |
渡邉 暁子 文教大学, 国際学部, 准教授 (70553684)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | フィリピン / ムスリム / 異文化間結婚 / 第二世代 / アイデンティティ / 新型コロナウィルス / ソーシャルメディア |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、マニラおよび南部フィリピンにて、「ハーフ」や「メスティソ」の居住者のうち、それぞれ20代~30代を選定し、聞き取りを実施する予定であった。しかしながら、世界的な新型コロナウイルスの感染拡大により、フィリピンへの渡航が禁じられ、それによるマニラでの重点フィールド調査、および南部フィリピンでの短期フィールド調査が不可能になった。同様に、国内調査として予定していた、アジア経済研究所、東京外国語大学、東南アジア研究所、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科図書室において、東南アジアのムスリム社会に関する民族誌、イスラーム地域研究に係る文献資料の調査も休館措置等 により、実施困難となった。 また、令和3年度は、南部フィリピンにて夏期に20日間の調査研究をおこない、前年度の 短期フィールド調査を実施したサンボアンガ市にて、さらに5名への聞き取りを執りおこなうよていであった。これらも前年から継続して、フィリピン渡航が叶わず、取りやめとなった。 このため、昨年と同じく、主に研究に関連する文献や、調査手法に関する文献を購入し、そのあり方について研究を進めた。また、新型コロナウイルスに対してフィリピン政府、マニラや南部フィリピンに居住するフィリピン・ムスリムがどのような対応を取っているのかを、新聞記事や現地友人のSNSなどを使って追跡し、また、一部の友人とはSNSを使って現状の聞き取りをおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和2年度は、夏期に20日間マニラに赴き、春期に10日間南部フィリピンに赴き、それぞれの場所で、フィリピン・ムスリムのなかでも「ハーフ」や「メスティソ」の出自を持つ人々から20代~30代を選定し、聞き取りを実施する予定であった。それにより、「ハーフ」や「メスティソ」のアイデンティティと「成功」のフレーム、およびエスニシティを固定化する複数のポリティクスの働きについて研究を進めることを目指していた。 同様に、令和3年度においては、令和2年度に実施できなかった海外での重点・短期フィールド調査は、令和3年度以降に持ち越し、特に重点フィールド調査に関しては、令和3年度後半に在外研修をフィリピンで行うため、この期間を使って、調査研究を進めていく予定であった。ムスリムの「ホームランド」とされるミンダナオ島において調査を実施し、スノーボールサンプリングメソッドから、移動先から「帰郷」した人びとや、在来の人びとに聞き取りおおこなう予定であった。 しかしながら、世界的な新型コロナウイルスの感染拡大により、一般外国人のフィリピン入国が禁じられ、在外研修の受け入れもフィリピン大学としては許可を得たが、入国管理局から許可を得ることができなかった。このため、フィールド調査が不可能になった。国内においても、研究に関連する学術図書館や資料室が閉鎖されたことによって、資料を閲覧しての文献調査は実施困難となった。ゆえに、出版された図書、インターネットを介して集められる資料、既知の友人との接触の継続をすることで、研究を途切れさせないことを試みた。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、フィリピンでの調査を再開したい。 本科研においては、重点フィールド調査をマニラ、短期フィールド調査をミンダナオ島の2都市に絞ったが、本年度は、マニラを中心に調査を進めていく。時期は夏期で、20日間の調査を実施する。マニラにおいて、民族ムスリムが集住する地域[調査地1]と、を拠点に、「ハーフ」や「メスティソ」の居住者のうちそれぞれ20代~30代の単身者5名、既婚者5名を対象として、論点Ⅰ「『ハーフ』や『メスティソ』のエスニシティ観と『成功』のフレーム」と論点Ⅱ「エスニシティを固定化する複数のポリティクスの働き」について聞き取りを実施する。 また、特に調査地1には、ムスリムの民族評議会があることが分かっており、この評議会がどのように「フォーマル」・エスニシティを規定しようとしているのかを評議員や住民から聞き取っていく。さらには、中央政府がこのムスリム集住地域の人びとをどのように規定しようとしているのかを、雑誌・新聞記事や、研究者、自治体職員、ムスリム議員らへの聞き取りから探る。 なお、マニラにおいては、キリスト教徒とムスリムが混住する地域[調査地2]も調査対象にしているが、複数のフィールドで調査を実施する調整がまだできていないこともあり、調査地2での調査活動は次年度に回したい。 一方、国内調査においても、令和4年度の中盤から実施していきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの世界的な感染拡大により、フィリピンならびに国内でのフィールド調査が不可能となり、研究計画に遅れた生じた。ゆえに、次年度使用額が発生している。 各国の水際対策が緩和され、令和4年度夏期より、フィリピンにおける重点調査を再開する予定である。本研究費は主に旅費、調査謝礼費、文献資料費に主に使用していく。
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