2022 Fiscal Year Research-status Report
Turkish Refugee Policies and Protection and Assistance to Syrian Refugees
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20K12329
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
伊藤 寛了 帝京大学, 経済学部, 講師 (30846332)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | トルコ / シリア難民 / 難民保護 / 難民支援 / 難民政策 / 定住 / 社会統合 / 共生 |
Outline of Annual Research Achievements |
3年目となる2022年度は、昨年度実施することができなかったトルコでの実地調査を2回行った。第1回は2022年9月1日から15日にかけて、トルコの西部(A市)、中部(B市)、南東部(C市)の3都市において10名のシリア難民にインタビューし、主としてトルコ社会での社会統合状況について聞き取りを行った。またトルコで活動するNGOや研究者とも面談し、トルコ政府の難民政策や支援施策、シリア難民をめぐる社会情勢、研究課題などについて意見交換を行った。第2回は2023年3月23日から4月4日にかけて、トルコの西部(A市)、中部(B市およびD市)、南東部(E市)の3都市で11名のシリア難民にインタビューを行い、第1回に引き続き主としてトルコ社会での社会統合状況について聞き取りを行った。本来は南東部のC市での調査を予定していたが、2023年2月のトルコ・シリア大地震により同地に緊急時代宣言が発せられたため、中部のD市および南東部のE市に調査地を変更した。また前回同様にトルコで活動するNGOや研究者、政府関係者らとも面談し、トルコ政府の難民政策や支援施策、シリア難民をめぐる社会情勢、研究課題などについて意見交換を行った。 他方で、2022年4月30日に多文化社会研究会と共催で「第172回多文化共創フォーラム」を開催し「ウクライナ情勢を巡るトルコの動向と難を巡るEUと日本の動き」と題する報告を、続く11月14日にはシンポジウム「ロシア ・ ウクライナ紛争の原因と影響」(主催:帝京大学、後援:千代田区)では「ウクライナ難民への一時保護による対応:トルコからの示唆」と題する報告を行い、1年目・2年目に行った研究成果の一部について発表した。また自治体国際化協会の多文化共生ポータルサイトに、コラム「多文化共創とコミュニティ:トルコから見たウクライナ危機」を寄稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍により2021年度に実施できなかったトルコでの実地調査を2回行い、研究データを収集した。調査地の選択にあたっては、実地調査経験のある研究者の意見なども踏まえつつ、限られた期間でのフィールドワークの実現可能性なども考慮に入れ、それぞれ性格が異なる西部のA市、中部のB市、南東部のC市を選んだ。上述のとおり、第2回調査の前月に発生した地震により、C市での調査は見送らざるを得なくなり、急遽、D市およびE市に調査地を変更した。しかし変更により、新たなデータや調査協力者を得ることできたことは、今後の研究に寄与するものと考えられる。実地調査ではシリア難民へのインタビュー調査以外にも、現地のNGOや支援関係者、研究者にも聞き取り調査を行った。そうした人々と研究上の課題や疑問などについて意見交換を行う中で、研究を促進する新たな視角や知見を得ることができた。また実地調査の機会を捉え、文献資料の収集にも努めた。 他方で、先述のように1年目・2年目の成果の一部について発表を行った。特に社会的要請の強いウクライナ難民に関し、EUが難民保護の制度として採用・発動した「一時保護」について、トルコの一時保護との比較を中心に、日本の受入体制にも触れつつ述べた。加えて、2023年5月のトルコ大統領選挙・議会総選挙を控え、トルコではナショナリズムと反難民感情が高まりを見せていることから、2022年度もトルコ民族主義最大の思想家として知られるズィヤ・ギョカルプの主著『トルコ化、イスラム化、近代化』の翻訳に監訳者として参画した(2023年3月発行)。またトルコ現政権の思想的バックボーンでもあり政策や支援施策にも影響を及ぼしうるイスラームに関し、『イスラーム文化事典』(丸善出版、2023年1月発行)に事典項目を執筆した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は21年度に行うことができなかった分を取り戻すべく実地調査の調整と実施、データの収集に多くの時間を割いたため、収集データの分析については十分に行うことができなかった。こうした状況を踏まえ、4年目となる2023年度は、22年度に引き続きトルコでの実地調査を進めるとともに、収集したデータの分析および先行研究や既存のデータとの比較分析を中心に研究を推進することとする。 実地調査については地震後の復興状況も踏まえつつ、可能であればC市で再調査を行い、シリア難民の社会統合の経年推移を見ることとしたい。その際、C市ではNGO等への聞き取りを十分に行うことができなかったため、その方面での調査を進めることとする。またデータの分析を通じて得られた成果については、2023年度においても引き続き発表していくこととする。
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Causes of Carryover |
旅費については他の研究費を利用することができたため残額が生じた。また人件費・謝金については、実地調査で必要に応じてアラビア通訳を手配する予定であったが、難民の予定が当日になるまで決まらなかったことや、他の言語で面談を行うことが可能であったことなどにより、残額が生じた。これらについては次年度に充当することとし、必要に応じて文献購入費等にも充てることとしたい。
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Remarks |
シンポジウム開催報告
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