2021 Fiscal Year Research-status Report
Research on Taiwan cinema of the 1950s under the martial law from the perspective of the double continuity
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20K12330
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
三澤 真美恵 日本大学, 文理学部, 教授 (90386706)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 台湾 / 映画 / 戒厳時期 / 公共圏 / 白克 / 林摶秋 / 何基明 |
Outline of Annual Research Achievements |
COVID-19感染拡大のため台湾現地での調査ができないなか、新たな試みとして、映画評論家・山田宏一氏の協力を得てDVD化された林摶秋映画4作品のテキスト分析を行った。その成果は、「山田宏一と観る林摶秋映画」(全4回)として研究室HPおよび研究室ブログにて公開中である。 また、「二重の連続性」に関わる現段階での研究成果の一部は国際シンポジウム「よみがえる台湾語映画の世界」(2021年10月2日)で口頭報告したほか、「ニューシネマ以前の台湾における映画状況」(『ユリイカ 特集=台湾映画の現在』2021年8月号)、「戦後台湾映画における「二重の連続性」に関する試論――白克と林摶秋の足跡から」(『JunCture』13号、2022年3月)などの論考として公刊した。 「オルタナティブな公共圏」については、白色テロに関わる事実関係などアーカイブ調査が必須となる1950-60年代の代わりに、昨年度に引き続きインターネットでの新聞記事データベースの利用が有効となる戒厳時期の終わり(1980年代末-1990年代)に着目している。今年度は現地調査員の協力を得て、同時期にドキュメンタリー映画を撮った關曉榮監督にリモートでのインタビューも実施できた。また、当該時期に台湾で可視化された「慰安婦」問題に関わる2作品を選び、これらが当時支配的だった政治的対立とは異なる「別様の連帯」のなかから登場したことを明らかにし、「現代台湾「慰安婦」表象に関する一考察――ドキュメンタリー映画『阿媽の秘密』『葦の歌』を中心に」(『中国語中国文化』19号、2022年3月)として公刊した。 さらに、2022年1月22日には本科研の主催で「戦後台湾映画に関する研究会」をオンラインで開催し、西村正男氏より「音楽研究と映画研究の境界―一年間の台湾滞在で学んだこと」、山崎泉氏より「湯浅浪男と台湾」について、専門的知識の提供を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画では2020-2021年度に台湾での調査や研究会を予定していたがCOVID-19感染拡大のため現地に赴くことができない状況が続いている。次善の策として現地調査員に依頼してリモートでの調査やインタビューを代替的に行っているが、台湾でもCOVID-19感染が確認され、現地調査員の行動にも制限がかかり、高齢の対象者からインタビューの実施延期を求められるなど、代替的な方法によっても当初計画からの遅れは取り戻せていない。他方で、映画評論家・山田宏一氏の協力を得ての作品分析や、日本からも利用可能な有償の台湾新聞記事データベースで一定の調査ができる戒厳時期の終わり(1980年代末-1990年代)に着目することで「オルタナティブな公共圏」の具体的な様態として「移行期正義とドキュメンタリー映画」の関係を考察するなど、制約のなかで推進可能な方法や対象を模索したことで、当初計画にはなかった研究成果も得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
感染状況がどう変化するか先は読めないが、現地調査員に依頼しての資料収集やリモート・インタビュー、インターネットを利用したデータベースの調査を継続する。また、オンライン会議も活用して、内外の関連研究者を招いて研究会を実施する。同時に、台湾への渡航が可能になった時点で、遅れている現地調査を短期でも数度に分けて実施する予定である。2023年に予定している国際ワークショップについては、場合によってはオンライン開催することも射程に入れて準備を進め、2024年度には予定通り、一定の研究成果を出すことを目指す。
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Causes of Carryover |
予定していた台湾への出張調査がCOVID-19感染拡大のため実施できず旅費の執行がなかった。その分、現地調査員を利用する人件費や、インターネット・データベースの利用料など代替的な方法による調査研究費に使用した。ただし、台湾現地でもCOVID-19感染拡大によるアーカイブの閉鎖や行動制限などがあり、十分に執行できたとはいえない。今後も感染状況に応じて、臨機応変に代替的な方法を用い、そのための費用を執行する。同時に、感染状況が改善された時点で、随時、遅れている現地調査を実施するため旅費等を執行する予定である。
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