2022 Fiscal Year Research-status Report
チンパンジー・サンクチュアリにおける保全・保護概念形成と実践:シエラレオネの事例
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20K12344
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
樺澤 麻美 京都大学, アフリカ地域研究資料センター, 特任助教 (20865191)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 新型コロナ / チンパンジー・サンクチュアリ / 野生動物保護 / 野生動物保全 / シエラレオネ / チンパンジー / 飼育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、西アフリカのシエラレオネにあるチンパンジー・サンクチュアリで参与観察とサンクチュアリ関係者より聞き取り調査を行い、「サンクチュアリ」と呼ばれる野生動物保護施設、その施設における保護と飼育の実践、及び野生動物・環境保全を巡る倫理観の形成について明らかにするものである。 2020年度及び2021年度は予定していたシエラレオネでの現地調査が新型コロナウィルス感染拡大による渡航規制のため実施できなかった。2022年度前半は文献資料整理、対象サンクチュアリより入手した既存データの整理・分析、日本唯一のチンパンジー・サンクチュアリ(京都大学熊本サンクチュアリ)を訪問し、関係者と意見交換を行った。2022年度後半に調査対象であるシエラレオネ国のタクガマ・チンパンジー・サンクチュアリにボランティアとして滞在し、参与観察と聞き取り調査を行った。今回の現地調査では、コロナ感染拡大時から「コロナ後」への移行期の経験についての語りが多く聞かれた。ヒトからヒト及びヒトからチンパンジーへのコロナ感染を防ぐため、サンクチュアリ内で様々な規則が新たに導入された。また、感染拡大時には獣医やマネージメントレベルといった主要ポジション以外の外国人スタッフの雇用を削減し、海外からのボランティアの受入も停止していたため、現地職員が主体となって飼育を行っていた。コロナ以前にも、内戦、チンパンジー脱出、エボラ出血熱の流行といった非常事態の際に、現地職員及び周辺住民の理解と協力がサンクチュアリ継続において重要な役割を果たしてきている。一方で、非常事態時には、サンクチュアリの収入源である外国人ボランティアや観光客の受入が途絶えてしまい、運営資金確保における課題がある。また、地方での保全活動もコロナの影響により停滞していたことが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度と2021年度にコロナ感染拡大による渡航規制のため、現地調査が実施できなかったが、文献資料収集とサンクチュアリより入手した既存データの整理と分析を行った。2022年度においても、前半は渡航計画実施の可否が不明であったため、渡航不可の場合も前提とした調査計画の見直しを行った。2022年度後半の現地調査で一定の成果は得られた。一方で、渡航中は学会での発表を見送らざる得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初2022年度が最終年度であったが、2020年度と2021年度に現地調査が実施できなかったため、延長した。次年度前半は2022年度の現地調査のデータの整理と分析、後半は現地調査と論文の執筆を行う。また、日本霊長類学会他での発表を予定している。
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Causes of Carryover |
当初シエラレオネへの渡航を計4回計画していたが、新型コロナウィルス感染拡大により計画通りに実施できなかったため、旅費、人件費・謝金の使用ができなかった。2022年度に第1回目の渡航を実施し、旅費の一部を使用した。本年度もシエラレオネでの現地調査を予定しており、残金を充当する計画である。
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