2023 Fiscal Year Annual Research Report
チンパンジー・サンクチュアリにおける保全・保護概念形成と実践:シエラレオネの事例
Project/Area Number |
20K12344
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
樺澤 麻美 京都大学, アフリカ地域研究資料センター, 特任助教 (20865191)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | チンパンジー / シエラレオネ / 野生動物保全 / 動物福祉 / サンクチュアリ / ヒトと動物の関係 / 動物観 / 国際協力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、西アフリカのシエラレオネ国にあるタクガマ・チンパンジー・サンクチュアリで参与観察とサンクチュアリ関係者より聞き取り調査を行い、「サンクチュア リ」と呼ばれる野生動物保護施設、その施設における保護と飼育の実践、及び野生動物・環境保全を巡る倫理観の形成について明らかにするものである。 最終年度は2022年度に引き続き、調査対象であるサンクチュアリにボランティアとして滞在し、約6ヶ月間の参与観察を行なった。前回の現地調査時に比べ、新型コロナによる渡航や行動規制が世界的に緩和され、国外からのボランティア及び訪問客が増えた。シエラレオネ政府は、ナショナル・アニマルであるチンパンジーを「観光の顔」とし、サンクチュアリと協力して観光を促進している。しかし、11月末のクーデター未遂により約1ヶ月ほど外出禁止令が出され、サンクチュアリの運営・維持に様々な外部的要因が影響していることが観察できた。サンクチュアリには2024年3月時点で120個体が飼育されているが、毎年新たな個体が保護されており、今後も増えると想定される。サンクチュアリが位置する国立公園内には野生のチンパンジーも生息しているが、首都に隣接しているため人口増加に伴い、違法な森林伐採が行われており、保全活動も課題の一つである。増加する飼育個体の福祉の向上と周辺の野生チンパンジーの保全には、現地の人々の理解と協力無しには成し得ず、国外からの実務者と現地の人々との協力関係構築が重要である。 本研究の成果を、第26回「野生生物と社会」学会、第37回及び第39回日本霊長類学会で発表した。また、2023年12月にタクガマ・チンパンジー・サンクチュアリと日本学術振興会ナイロビオフィスで共催されたシンポジウム「野生動物保全におけるエコツーリズムの役割と挑戦」に参加し、シエラレオネ、ケニア、日本の研究者及び実務者と意見交換を行った。
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