2020 Fiscal Year Research-status Report
Re-examining the anti-colonial discourses in former Portuguese Africa: How African press argued
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20K12353
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
矢澤 達宏 上智大学, 外国語学部, 教授 (00406646)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ポルトガル領アフリカ / 植民地主義 / 新聞 / ブラジル / 人種主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度はコロナ禍により、予定していたポルトガル、ブラジルへの渡航調査ができなかったため、当初の予定が大幅に狂ってしまった。研究の大部分は、渡航調査で予定していた旧ポルトガル領植民地におけるアフリカ人新聞とブラジルの黒人新聞という一次資料の入手を大前提としていたため、可能な作業はおのずと以下のごとく限られたものとなった。 第一は、二次資料を用いた旧ポルトガル領アフリカにおける植民地主義およびアフリカ人ナショナリストの活動に関する研究である。研究書については、目星をつけていたものすべてとはいかなかったものの、ある程度のタイトルを入手できた。アフリカ人新聞についての数少ない研究書のうち3冊を入手できたのは不幸中の幸いであった。これにより、アフリカ人新聞の概略を把握することができた。また、一次資料の分析が予定していたほど進められなかった分、その時間を比較のためフランス領をはじめとするアフリカ他地域の植民地主義の把握にも割けたことは予定外の収穫であった。 第二は、オンラインで入手可能であった一部の一次資料の分析である。旧ポルトガル領植民地のアフリカ人新聞の一部はCRL Digital Delivery Systemにおいて公開されており、それらを入手し分析を進めた。その成果の一部は、第一としてあげた二次資料による研究の成果とあわせ、令和3年5月の日本アフリカ学会の第58回研究大会において発表予定である。 第三は、ブラジルにおける黒人運動および人種民主主義(とその延長であるポルトガル熱帯主義)についての二次資料を用いた研究の継続である。この研究対象に関しては近年、あらたな研究成果が定期的に発表されており、最新の研究動向をおさえることができた。その成果の一部は令和3年度に刊行予定の共著書の一部として発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ禍が予想よりも長引いていることで、予定していた研究活動のうち、ポルトガルおよびブラジルへの渡航による資料の探索および収集は実現できなかった。それゆえ、その大部分を渡航時に入手する予定であった一次資料の分析もまた大幅に遅れている。研究の主たる材料である旧ポルトガル領植民地のアフリカ人新聞のうち、手元にある紙面は分量や発行年代が限られているため、テキストマイニングの有効な方法の特定にも至っていない。 一方、二次資料を用いた旧ポルトガル領植民地のアフリカ人新聞の概略や、ポルトガルの植民地主義、アフリカ人ナショナリストの活動の把握に関しては、概ね予定通り進んでいると考えている。本研究の中心的な対象であるアフリカ人新聞の言説を分析していく上で対照させるべき事実関係や情勢のトレンドの要点は把握できつつある。 一次資料たるアフリカ人新聞についても、入手できた一部についてはトピックや論調の傾向の把握につとめており、今後の本格的な分析の足がかりを見定めつつある。 ブラジルにおける黒人運動および人種民主主義/ポルトガル熱帯主義の研究については、ポルトガル領アフリカの反植民地主義言説の研究ほど渡航調査延期の影響は大きくない。本研究開始時点で、すでに資料および知見の点で一定の蓄積があったため、あらたな資料が限定的でも進展の余地は予想以上に大きかった。 テキストマイニングの手法についての理解も、分析材料の入手が進まなかったこともあいまり、予定の進度には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍の収束がなかなか見通せない以上、海外渡航による調査のうち、可能な部分については代替的な方法により研究の進捗をはかりたい。具体的には、ポルトガル国立図書館の電子複写サービスを利用し、渡航をせずに所蔵する旧ポルトガル領植民地のアフリカ人新聞の複写を入手することを考えている。閲覧はできないため、どの部分が必要かを見極めることはできないが、初年度に予定していて実現できなかった渡航用の予算が繰り越されているため、それを資料複写費にまわすことができる。したがって、今年度終盤の渡航調査が可能かどうか見極めながらだが、ある程度まとまった分量の複写を依頼できる可能性もある。コストを勘案しつつ、一定の分量は今年度早い段階で複写を依頼する予定である。 アフリカ人新聞をある程度の分量入手できた時点で、テキストマイニングの具体的な方法を見極め、実際の分析を試みたい。 旧ポルトガル領植民地のアフリカ人新聞の比較対象であるブラジルの黒人新聞に関しては、最悪、未入手の紙面が手に入らなくとも、これまでにすでに入手済みのもののみで比較分析自体は成り立つ。その分、最近も新しい研究成果の生まれつつある人種民主主義やポルトガル熱帯主義について二次資料を用いた考察の方に時間を割くことも考えている。
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Causes of Carryover |
令和2年度の予算(直接経費)のうち三分の二超を占めていた旅費が、コロナ禍のため海外渡航調査をやむをえず延期せざるをえなくなり未使用となったことが、このような多額の次年度使用額の生じた最大の理由である。 次年度使用額の使用計画については、現時点ではもともと令和3年度にも海外渡航調査での使用を最優先に考えている。本務との兼ね合いで実施可能な時期である夏期(8月下旬~9月)と春期(2月下旬~3月)のうち、少なくとも前者はコロナ禍収束の見通しがたたないため、後者の時期における実施をいまのところは視野には入れておきたい。 しかしながら、後者の時期においても海外渡航調査の実施が困難である可能性も多分にあるため、令和3年度は現地図書館等の電子ファイルを媒体とした複写サービスにより発注可能な一部資料は先行して入手を進めていきたい。次年度使用額のある程度の部分はこのための費用にあてることを予定している。このサービスにより入手可能な資料が、本研究開始時に把握していたよりも多いことが判明したので、それによりコロナ禍で研究遂行に生じた深刻な遅滞を部分的には取り戻せると見込んでいる。 海外渡航調査以外の使途については使用計画に変更はないが、研究遂行方法の大幅な軌道修正にともない、あらたに必要性が生じることの見込まれる機器等の購入も検討中である。
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