2020 Fiscal Year Research-status Report
「みえる」移民、「みえない」移民――漁船、水産加工、魚食とインドネシア人
Project/Area Number |
20K12357
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
間瀬 朋子 南山大学, 外国語学部, 准教授 (80751099)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小池 誠 桃山学院大学, 国際教養学部, 教授 (00221953)
長津 一史 東洋大学, 社会学部, 教授 (20324676)
合地 幸子 東洋大学, アジア文化研究所, 客員研究員 (60836542)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | インドネシア / 地域研究 / 移民労働者 / 漁船員 / 水産加工労働者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の方法は、インドネシア人漁船員・水産加工労働者の移民先と移民送出元を往復し、聞き取りと観察を積み重ねることである。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大のため、2020年度は海外調査を断念せざるを得なかった上、日本国内での調査活動も大幅に制限された。 2020年9月の全体ミーティング(オンライン)では、年次研究計画を確認し、研究代表者の間瀬朋子が「中国漁船Lu Huang Yuan Yu 117・118事件とその後」と題して、特に2020年上半期に次々に明るみに出た中国漁船で働くインドネシア人が置かれる劣悪な状況、その改善に動くインドネシア政府・NGOの取り組みを、研究分担者の合地幸子が「帰れない技能実習生の妊娠とPositif Covid-19」と題して、インドネシア人実習生が抱える諸問題を報告した。研究分担者の長津一史は、気仙沼で水産加工実習生と漁船員にキャリア・プラン、コロナ禍の就労環境、特定技能制度施行後の展望について聞き取りをした。合地は、2020年11月に成田空港、2021年1月茨城県神栖市で漁業実習生と漁船員に面会し、聞き取りを実施した。 海外調査が不可能な状況で、本研究はインドネシア人漁船員の経歴や経験に関する情報をオンラインで収集しはじめた。2021年3月、間瀬と合地がミーティング(オンライン)をして、就労段階別に質問項目を整理し、質問票を作成した。 受入れ国・地域からの絶対的な需要に裏づけられながら「みえない」移民だった漁船員は、感染症の世界的まん延を契機に、その抱える雇用契約、出入国、洋上・上陸生活にかかる諸問題を顕在化させ、メディアに取り上げられ、やや注目されるようになった。「みえる」移民の水産加工実習生の必要性も、コロナ禍で改めて確認された。本研究の資料調査・国内調査はそのような事実を拾いあげ、移民就労の個別具体的な文脈を描き出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度に研究活動を実施しなかったわけではない。新型コロナウイルス感染症がまん延する中で、規模を縮小して国内調査活動やインドネシア人の漁業・水産加工技能実習生や漁船員との交流を積み重ね、SNSやGoogleフォームを活用して各国で就労中の漁船員やインドネシアに帰還した元漁船員へのオンライン調査を開始した。合わせて、文献・資料調査も進めてきた。 しかし、概要で述べたように、本研究は移民先・移民送出元の双方でのライフヒストリーおよび質問票調査による聞き取りと観察に依拠するものである。感染症の拡大で、インドネシアおよび台湾での調査の取り止めと日本国内調査の規模縮小を余儀なくされたため、多少の方向転換を試みたが、当初の計画通りにはデータ(漁業・水産加工技能実習生や漁船員の声)を収集できず、研究進捗状況は芳しくなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度の海外調査の実施可否も、不透明である。そこで、まずはオンラインによるインドネシア人漁船員への聞き取りを継続し、データを収集することに尽力する。場合によっては、海外調査に替えて日本国内調査のさらなる充実を図ることで、本研究を進展させていく必要もあるだろう。当分は、日本・日本籍漁船で就労するインドネシア人に焦点を当てて、「みえない(みえにくい)」移民の姿を明らかすること、資料調査で船員労働や漁船労働を理論的に整理することにも努めたい。 2020年度と同様、ミーティング(オンライン)を開催し、本研究メンバー間での情報交換を活発化させていく。 オンライン調査の結果は、本研究の中間報告として東南アジア学会例会や南山大学アジア・太平洋研究センター開催のセミナー等で公表するとともに、東洋大学アジア文化研究所の年報または同研究所のACRI冊子として活字化する予定である。
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Causes of Carryover |
2020年度に予定していた海外調査はすべて中止となり、旅費を支出できなかった。同時に、調査アシスタントや聞き取りデータ起こし作業のための人件費・謝金も支出できなかった。感染症まん延下での調査・研究活動の一時的な縮小に伴い、物品費もほとんど使用しなかった。すべてこれらは、次年度に繰り越すことにする。
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Research Products
(3 results)