2021 Fiscal Year Research-status Report
「みえる」移民、「みえない」移民――漁船、水産加工、魚食とインドネシア人
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20K12357
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
間瀬 朋子 南山大学, 外国語学部, 准教授 (80751099)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小池 誠 桃山学院大学, 国際教養学部, 教授 (00221953)
長津 一史 東洋大学, 社会学部, 教授 (20324676)
合地 幸子 東洋大学, アジア文化研究所, 客員研究員 (60836542)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | インドネシア / 地域研究 / 移住労働者 / 漁船員 / 水産加工労働者 / 技能実習生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は移住先と移住送り出し元(出身地)を往復して実施され、船員または水産加工労働者として移住労働をする(していた)インドネシア人へのライフヒストリーおよび質問票による聞き取りと観察に依拠するものである。ところが、新型コロナ・パンデミックが収束せず、2020年度に引きつづき2021年度にも、台湾(移住先)とインドネシア(移住送り出し元)での海外調査は実現しなかった。また、日本(移住先)での調査活動も、思うようには進められなかった。 2021年度は、(1)過去の科研費プロジェクトの枠組みで実施したフィールド調査の再検討を通じて、現在の課題をより深く掘り下げる、(2)オンライン調査で新しいデータを収集するという2つの方法により、メンバー各人は研究をおこなった。その際、研究代表者の間瀬朋子は〈帰還移民が担う社会的資本のフィードバック・ループ〉、研究分担者の小池誠は〈モスクで繰り広げられる移民漁船員の組織化〉、同じく長津一史は〈マグロをめぐる海民のグローバルヒストリー〉、同じく合地幸子は〈技能実習生の再来日〉を、研究の切り口にした。 とくに長津は、近海・遠洋漁業に従事するインドネシア人漁船員の就労歴に関する聞き取りやアンケートを宮城県気仙沼市と宮崎県日南市で実施し、新データを数多く収集した。台湾、韓国、スペインでの就労経験を持つ漁船員に対してはオンライン聞き取り、気仙沼市の水産加工場で働くインドネシア人技能実習生に対してはアンケート調査も実施した。質問票は、間瀬と合地が作成したものがもとになっている。滞日インドネシア人との交流会「気仙沼インドネシア・デイ」(2021年11月)には、長津を筆頭に間瀬と合地も関わり、同地のインドネシア人漁船員や水産加工労働者との信頼醸成に努めた。 これらの活動で得た内容を報告や論文として発表するための準備は、現在進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナ・パンデミックが収束しない状況下で、当初の予定よりも規模を縮小して、漁業・水産加工分野に従事するインドネシア出身の技能実習生や漁船員に関する日本での調査を実施したり、かれらとの交流を積み重ねたりしている。SNSやGoogleフォームを活用して各国(海)で就労中の漁船員、帰還した元漁船員等へのオンライン調査もおこなっている。文献・資料の渉猟も進めている。 とはいえ、重要な移住先のひとつ・台湾、移住送り出し元・インドネシアでの調査は、本研究にとって絶対的に重要だが、現在に至るまで実施できていない。海外調査の断念と日本国内調査の規模縮小により、研究プロジェクトは当初のデザインや計画からの変更を迫られ、いま実行しうる方向性と方法論を模索しながら進行している。したがって、進捗状況は芳しいとは言えない。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度、2021年度に比べると、2022年度の海外調査の実施可能性には期待できるかもしれない。国内調査も実施しやすくなってきた。 2022年度は日本での調査を充実させ、インドネシア人漁船員・水産加工労働者に関する新データの収集に尽力する。そのために、本研究メンバーの有するネットワークを活かして、インドネシア人以外の滞日外国人や漁船員・水産加工労働者にも目配りした研究調査活動を試みる。オンラインによるインドネシア人漁船員への聞き取りは継続し、よりまとまった数のデータを収集することで、研究の進展を図る。 不確実な状況下でも研究成果を出せるよう、2022年度には複数回のミーティングをもち、メンバー間でより緊密に情報を共有する。さらに、少なくとも2回の研究会を実施する。 研究結果は、インドネシア研究懇話会や南山大学アジア・太平洋研究センター開催のセミナー等で報告するとともに、東洋大学アジア文化研究所の報告書(ACRI)、『白山人類学』への投稿論文などとして公刊することをめざす。
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Causes of Carryover |
国内調査のための旅費は、ある程度使用した。しかし、2020年度、2021年度に予定していた海外(インドネシア、台湾)での調査はすべて中止となり、その分の旅費が大幅に残った。それにともない、海外調査にかかる調査アシスタントや聞き取りデータ起こし作業のための人件費・謝金も支出できずに残った。調査活動が縮小しているため、物品費もそれほど使用できていない。 2020年度、2021年度に使用できなかった分はすべて、次年度に繰り越すことにする。
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Research Products
(8 results)