2021 Fiscal Year Research-status Report
The Process of Ethnic Art Generation--Tompa Culture to be Resources with Tourism in Lijiang, Yunnan Province, China
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20K12361
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
高 茜 国立民族学博物館, 超域フィールド科学研究部, 外来研究員 (90836404)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 民族芸術・工芸 / 観光土産品 / トンパ文化 / デザイン |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度の計画では、トンパ文化に関連する土産品の創出から制作者、意匠、制作などの実態調査を行うこととなっていた。現地へのフィールドワークができない状態が続いているため、インターネット上の情報および現地とのオンライン通信等によって資料収集を行った。2005年から2019年まで、麗江ナシ族の日常的文化生活の中で、木彫、文字、絵画におけるトンパ文字の利用が数多く行われていったことが分かった。それは、それらの文化が2019年までに現地で根付いてきたことの反映と考えられる。発表した論文では、1980年代末から現在まで30年余りの麗江ナシ族木彫の歴史を振り返り、検討したものである。さらに、麗江ナシ族のトンパ文化の現地の日常生活における普及や、観光土産名所の古城での進出などに関するテーマについて、2021年4月、2022年1月に比較民俗、文化遺産それぞれの分野の研究会で口頭発表を行った。 現地調査が困難ということもあり、関連するテーマとして、トンパ文字の日本的越境についても、日本で調査を行った。その内容は、麗江のトンパ文化が置かれているグローバル化環境の一側面を捉え、アジア的な視座から、現代麗江ナシ族のトンパ文化を理解することに役立つものである。調査は、麗江のトンパ土産品の創出・定着期あたる1990年代から2000年初頭にかけて、日本でのトンパ文字への関心に着目し、文化交流およびグラフィックデザイン活動を調査した。ナシ文化の研究をはじめ、グローバル観光や、一般民衆に対するメディアの発信も考察対象にした。トンパ文字の特徴的図案が日本グラフィックデザイン界で話題となり、若者のあいだでブームとなったことは、21世紀の中日文化交流や現代的視覚デザイン文化・アートの伝達事例として挙げることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度と同じく、フィールドワークができなかったため、研究内容を大幅に調整した。木彫以外の各種の民芸・土産品の調査ができなかった。インターネットの情報や現地への連絡を通じて一定の資料を収集することができたが、現地での確認作業、そして継続的に資料の収集は、今後の課題となっている。トンパ絵画の研究については、日本のグラフィックデザインにおける芸術造形まで手を伸ばすことができ、本課題の新たな展開へと繋がったが、それにより、グローバル的な意味合いなど、より総合的かつ横断的な視点で考察に進むことが必要になっている。また、ナシ族のトンパ文化に関わる社会組織、それらの活動に関する確認調査も含め、フィールドワークと関係する部分については、現時点では遅れている。このような状況を踏まえ、実現可能な実行案を定めていくことが必要だと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1、フィールドワークによって、資料の再確認を現地で行う。それらの資料を分析した上で、地域文化変容、文化遺産や資源化などの角度からの考察を進める。また、場合によっては、現時点で実行可能な予備案を策定し、それに従って、フィールドワークおよび考察を進める。 2、トンパ絵画の研究について、グラフィックデザインの領域の作品も対象として加え、現地における現代アートの再生、グローバル化世界における視覚イメージの生成および伝達や文化交流の観点から分析を行い、考察に加える予定である。 3、本課題で扱う内容と関連する国内外の研究者と研究会で交流を行い、研究報告の執筆に着手する準備を行う。研究成果について、多様な発表形式で社会に向けて発信することを目指す。
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Causes of Carryover |
現地までフィールドワークができなかったため。今後の調査や、必要な部品の購入などに使うつもりである。
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