2020 Fiscal Year Research-status Report
インターネット時代における中国のメディア政策の新たな展開と実施過程
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20K12365
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
西 茹 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 教授 (50533569)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 中国メディア / メディア政策 / ネットメディア / ソーシャルメディア / 政治コミュニケーション / メディア融合 / 世論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、習近平政権におけるメディア政策の新たな展開の実態を明らかにし、ネットメディアと融合した官製メディア、いわゆる「新型主流メディア」がソーシャルメディアの全面展開する環境の中で果たそうとしている世論誘導機能のメカニズムの解明しようとする。 令和2年度は、実施した研究内容は下記の3点にまとめられる。①習近平政権のメディア、世論、イデオロギー分野の工作、インターネット、国家ガバナンス、社会ガバナンスに関する法整備と政策を収集整理し、これまで蓄積された「中国メディア政策年表」に書き加えた作業を行ったこと、②①の作業を踏まえ、情報環境、世論、メディアに関する中国共産党と政府の基本的認識を明らかにし、それを歴史的文脈の中で位置づけ、検討を行ったこと、③習近平政権のメディア政策とメディア構造的変貌と機能の変容に関する基本的な文献を集め、検討したことである。 上記の考察によって、中国では、2014年の当局によるメディア融合戦略の導入指示以来、一定の成果を上げてきたが、伝統メディアとネットメディアの影響力、競争力は期待通りに縮まっていない。そういう現状を踏まえ、党と政府は「メディアの高度な融合発展を加速せよ」と指示し、伝統メディアの市場競争の意識と能力を高め、巨大かつ強力なインターネットプラットフォームを確立し、ネットメディアの陣地を占領しようとする狙いが明らかになった。先進国並みの「社会主義現代国家」を建設するため、ネット空間を制御し、政権の維持と社会の安定を図る権威主義的なメディア理念が一貫して変わらない。こうした考察によって得た知見を、公益財団法人新聞通信調査会発行の『メディア展望』に「中国メディア事情」という連載で寄稿している。 今年度の科研費は、①~③上記の研究を遂行するための文献の購入費と資料整理などの作業を行ってもらう研究補助員への謝金に当てられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理由は文献調査は計画通りに行われたが、下記の予定の現地調査は新型コロナ感染症の全世界的な蔓延の中、中国へ渡航できず、実施できなかったためである。 中国社会科学院新聞与伝播研究所、上海社会科学院新聞研究所、中山大学互聯網与国家治理研究中心などの研究機関、および人民日報、新華通信社、上海新聞集団などのメディア機関を訪問し、本研究の枠組みや政府主導の「新型主流メディア」の動向について意見交換を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は「新型主流メディア」のモデル考察に重点を置きながら、世論形成における役割を解明するため、具体的に以下の取り組みを予定する。 ①文献調査を行うとともに、「スマートプラットフォーム型」メディアと位置づけられる人民日報社の「人民日報中央厨房」モデル、上海報業集団「澎湃新聞」モデルの考察に重点を置き、内容生産、配信、ユーザーからのフィードバック、世論動向のモニタリング、ビジネスモデルなどの面について現地調査を行う。また、こうしたモデルを中心するメディア機関のネットワーク化を考察し、「現代的なコミュニケーションシステム」構築の実態解明を踏まえ、こうしたメディアがいかにソーシャルメディアを利用し、世論形成に方向を付け、世論を誘導するかをケーススタディによって明らかにする。 ②UGC(ユーザーによって生成されるコンテンツ)とPGC(プロによって生成されるコンテンツ)よって構成されるネット情報環境をめぐって、官製スマートプラットフォームとネットメディアの大手のIT会社(「今日頭条」、「ティックトック」)との相違点を明らかにするため、IT会社を訪問し、聞き取り調査を行う。
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Causes of Carryover |
令和2年度において、新型コロナ感症の全世界的な染蔓延で中国へ渡航し現地調査が実施できなかったため、141,077円の未使用額が発生した。その未使用額は今年度において141,077円を現地調査の旅費として使用する予定である。
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