2020 Fiscal Year Research-status Report
Language Transmission and Inclusion of Ethnic Cultural Diversity in Francophone Canada - Ontario as an Example
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20K12368
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
小松 祐子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (90361295)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | カナダ・フランコフォン / アイデンティティ / 言語継承 / フランス語教育 / 多文化共生 / 文化多様性包摂 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、カナダで400年以上の歴史をもつフランコフォン(仏語系住民)について、その共同体意識の変化を今日の移民統合や多文化共生という観点から検討し、彼らの言語継承と新たなアイデンティティ確立のための教育上の取組みについて、文献資料と現地調査によってその現状、課題、展望を明らかにすることを目指している。2020年度には、文献やインターネット上で閲覧できる各種資料をもとに、以下の2つのテーマについて研究を進めた。 1.カナダ・フランコフォンのアイデンティティ形成教育について、その理論的基盤と歴史的経緯や背景を検討した。マイノリティ環境におけるフランス語学校ではアイデンティティ形成のための熱心な教育的取組みが展開されているが、その枠組みは構築主義の考え方に基づき、正統的周辺参加が推進されている。集団的記憶を大切にしながらも、差異を尊重し、個人を主体とした開かれたアイデンティティの構築が目指される。また、アイデンティティにかかわる教育を学校教育の使命として位置づけるだけでなく、共同体が学びの場となり、共同体自体の更新との相互構築的な関係の実現が目指されていることを明らかにすることができた。 2.オンタリオ州のフランコフォンについて、その集団の記憶に刻まれたいくつかの歴史的事件や危機を通して、彼らの集団としてのアイデンティティがいかに変遷してきたかを明らかにするとともに、フランコフォン共同体が今日抱える課題を検討した。「仏系カナダ」から「仏系オンタリオ」を経て、今日では「オンタリオ・フランコフォニー」と自己規定する彼らが、未来を志向する開かれた集団として、民族文化的多様性の包摂を目指していることを確認した。 これらは、今後現地の具体的な教育内容を検討するための基礎的研究として重要であると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型感染症感染拡大の影響で現地での調査計画はすべて延期せざるを得ない状況におかれている。そのため当面は、現地調査と並行して進める予定であった文献調査のほうに集中して取り組んでいる。現地調査以外の部分では十分な成果を上げることができていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度には主に以下の2つの面から研究を進める予定である。1.アイデンティティ形成教育の具体的カリキュラムの検討、2.フランス語教育の制度的現状と課題についての検討。これらにより、カナダ・オンタリオ州のフランコフォンの言語継承と文化多様性包摂のための努力の現状と課題、今後の展望をさらに詳しく明らかにしたい。またカナダのフランコフォニーのなかでオンタリオ・フランコフォンを位置づけることも試みる。いずれもインターネット上で閲覧可能な資料や入手可能な出版物をもとに研究を進める。また現地研究者を対象としたオンラインでの聴取りや講演依頼を行いたい。渡航が可能になり次第、現地調査を希望している。
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Causes of Carryover |
新型感染症感染拡大の影響で現地調査のための出張を延期している。新型感染症の状況が改善され次第、現地調査の実施を希望している。2021年度も引き続き渡航不可能な場合には、現地研究者のオンライン招聘や国内での成果発表などに予算を使用したいと考えている。
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