2022 Fiscal Year Research-status Report
Language Transmission and Inclusion of Ethnic Cultural Diversity in Francophone Canada - Ontario as an Example
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20K12368
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
小松 祐子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (90361295)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | カナダ・フランコフォン / アイデンティティ / 言語継承 / フランス語教育 / 多文化共生 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度にはとくに以下の2つのテーマについて研究を進めた。 1.カナダ・フランコフォンの「言語不安」について 本研究では、言語不安が言語規範に対する意識の問題であること、フランス語においては伝統的にフランス中心の規範意識が強く、とくに母語話者でありながら周辺的な存在において言語不安が強いことが確認された。カナダにおいてはケベックのフランス語が規範とされるが、そのケベックでは国際性が目指されていること、さらにカナダのマイノリティ・フランコフォンにおいては英語環境が与える地位的な不安もあることが確認され、彼らが抱える言語不安が複層的な性格をもつことが明らかになった。言語不安は、個人の問題にとどまらず、言語コミュニティの衰退を招く恐れがあり、言語政策や教育による対策が求められる。言語の不安を安心に変えるために、フランス語系カナダ青少年連盟が提案している「言語セキュリティのための全国戦略」に注目し、その内容を検討した。 2.フランコフォン移民の受入れと統合の課題について 積極的な移民受入れ政策を実行するカナダにおいてフランス語共同体が人口上の比重を保つためには、フランコフォン移民の移民を進めることが必要である。本研究では、フランコフォン移民の受入れが、カナダの二言語主義と多文化主義を前提として、連邦政府と共同体の協力のもとに推進されていることを明らかにした。マイノリティ・フランコフォン共同体における移民受入れ推進の背景と枠組みを連邦政府の各種政策文書やフランコフォン共同体組織の報告書をもとに確認し、公式に発表された移民受入れの目標値と達成状況をもとに移民受入れの現状をまとめた。さらに、移住プロモーション動画をもとに、移民・共同体・政府の三者にとっての理想の定住プロセスを分析し、移民がもたらす文化多様性への対応について検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
パンデミックの状況を鑑み2022年度も現地での調査計画は延期したが、計画の一部を変更し、文献での調査を進めるとともに現地研究者にオンラインで聴き取りを行うことにより、成果を上げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題最終年度となる2023年度には、これまでの研究成果を踏まえ、現地調査による具体的検証を行いたい。カナダにおけるフランス語系住民のアイデンティティ形成と言語継承、民族文化的多様性包摂のための課題を明らかにすることを目指す。また現地研究者を日本へ招へいし(不可能な場合はオンラインで)、本課題研究成果を発表し、社会へ還元するための機会を設ける。
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Causes of Carryover |
過去3年間にはパンデミックの影響により現地調査のための出張を延期してきたが、2023年度には現地での調査や海外研究者の日本への招へい、成果発表に予算を使用したいと考えている。
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