2022 Fiscal Year Research-status Report
台湾をめぐる高度人材の国際移動の新しい潮流に関する実証研究
Project/Area Number |
20K12388
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
中原 裕美子 九州産業大学, 経済学部, 教授 (40432843)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 国際労働力移動 / 外国人労働 / 台湾経済 / 後発国経済 / 中台間労働移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、以下の研究を進めた。 第一に、2020年度より研究を進めていた、本研究課題の背景となる、少子高齢化と外国人労働についてである。少子高齢化の中の外国人労働の現状と、それに付随する問題点に関する研究を深め、台湾と日本の比較を行い、9月に国際学会で発表した。そして、そこで頂いた質問やコメントを元に、研究を修正した。 第二に、これも初年度から研究を進めてきた、中国から台湾への、大学の正規の課程への留学を目的とした中国人学生の移動についてである。今年度は、これを、Saxenian(1999)の“Brain Circulation(頭脳環流)”というフレームワークに当てはめて分析した。現行の法律では、中国人学生は、アルバイトで学費を稼ぐことができず、台湾での就労経験も積むことができない。しかし、中国人学生が卒業後に台湾で就業経験を積むことができれば、帰国者として中国により多くの貢献ができる可能性があり、これが中国にとって、頭脳環流となり得ることが考えられる。従って、中国人学生の就労を可能にする政策変更を行えば、現在予想を下回っている台湾で学ぶ中国人学生の数を増やし、頭脳環流となり、両岸の相互理解につながることが期待できる。 第三に、以前から進めていた、半導体産業における台中両岸の人材移動を生じさせている、半導体産業の垂直分業の変容についての研究も、さらに深めた。かつては垂直統合の半導体企業が世界に名を馳せていたアメリカや日本といった先進国は、自国に半導体生産拠点を取り込もうとしていることから、「先進国企業が、低コストの後発国に立地するサプライヤーに生産委託」という形であった垂直分業が、「先進国の要請により、後発国サプライヤーが先進国に生産拠点を立地」という現象をも呈するようになったことを明らかにした。これを、半導体産業の垂直分業の変容の一つの側面であると捉え、査読論文として発表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020,2021年度は、新型コロナウィルスの影響により、海外調査や、国際学会への出席等が実施できなかったが、今年度は、本研究の成果の一部(少子高齢化と外国人労働について、日本と台湾の比較)を、9月に、国際労働移動や移民に関する世界最大のカンファレンスの1つで発表することができた。これには聴衆からたくさんのコメントをいただき、大変参考になった。 そして、中国から台湾への、大学の正規の課程への留学を目的とした中国人学生の移動については、Saxenian(1999)のフレームワークを用いることにし、これまでの研究から一歩進めた。 また、半導体産業における台中両岸の人材移動を生じさせている、半導体産業の垂直分業の変容についての研究を、査読論文として発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、これまで新型コロナウィルスの影響により実施できなかった台湾での調査を実施したいと考えている。具体的にどのような調査を行うかは、現在検討中である。 また、8月には、国際学会において、中国から台湾への、大学の正規の課程への留学を目的とした中国人学生の移動を、“Brain Circulation”というフレームワークに当てはめた研究成果を発表する予定である(すでに採択決定済み)。この事象にこのフレームワークを用いることが適切かどうか、少々確信が持てない部分もあるのだが、この学会では、人材移動に関する研究者から多くのコメントをいただけることが期待できるため、それらのコメントにより、さらに研究を進展させたい。
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Causes of Carryover |
2020,2021年度は、新型コロナウィルスの影響により、海外調査や、国際学会への参加等が実施できなかったため、2020,2021年度の使用額は、当初予定を大きく下回った。 その残額を繰り越したので、2022年度は国際学会への発表や国内での資料収集等は行ったものの、まだ大きく余裕があり、翌年度に繰り越すこととなった。 そこで、2023年度は、これまで新型コロナウィルスの影響により実施できなかった台湾での調査を実施したいと考えている。具体的にどのような調査を行うかは、現在検討中である。 また、2023年8月には、国際学会において、中国から台湾への、大学の正規の課程への留学を目的とした中国人学生の移動を、“Brain Circulation”というフレームワークに当てはめた研究成果を発表する予定である(すでに採択決定済み)。
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