2020 Fiscal Year Research-status Report
韓国財閥のファミリービジネスとしての持続可能性に関する研究
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20K12391
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
安倍 誠 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 新領域研究センター, 研究センター長 (90450478)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳町 功 慶應義塾大学, 総合政策学部(藤沢), 教授 (60230273)
遠藤 敏幸 同志社大学, 商学部, 准教授 (20454481)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 韓国 / 財閥 / ファミリービジネス / 継承 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度の研究実績としては、第一に、近年の韓国における財閥の継承に関連する研究サーベイと情報整理をおこなった。具体的には、まず、現在の文在寅政権に直接参加した張夏成と金尚祖、それに近年精力的に成果を出しているパクサンインといった改革派経済学者の著作を講読した。特に彼らが創業者家族の継承問題をどのように捉えているかに焦点を当てて、オンライン研究会にて討議をおこなった。次に、財閥創業者家族の第三世代をテーマにした一般書をいくつか取り上げ、韓国社会における財閥継承問題の受けとめ方について整理をおこなった。ここから明らかになったことは以下の点である。 ・研究では財閥の経営者(いわゆる「会長」「総帥」)を適切にガバナンスする財閥内外のシステムが未整備である点を問題視している。 ・それに対して一般社会では、財閥の第三世代が適切な教育を受けていない問題がある一方で、第二世代、第三世代にはない斬新な発想をする例があることを評価するなど、主に創業者家族の経営者としての資質に焦点を当てている。 第二に、メンバーそれぞれの担当分野の情報収集・整理作業をおこなった。具体的には、代表者の安倍は資産額で上位30位までの財閥について、創業者家族内での継承および所有・経営支配構造について、情報整理および分類作業を進めた。また研究分担者の柳町は特にロッテグループについて取り上げて、第一世代から第二世代への継承に伴う問題、及び第一世代と第二世代の経営のあり方の違いについて、資料の収集・整理をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は対面での研究会の開催が難しくなったこと、そして何よりも韓国への出張がまったくできなかったなど、コロナ禍の影響を大きく受けた。しかし、研究会はオンラインでの開催に切り替えたことにより、むしろ直接対面よりも柔軟に開催することが可能になった。出張ができずに資料・情報収集を十分におこなえなかったことは事実だが、インターネットで入手可能な資料を多く開拓できたことは大きな収穫となった。また、手持ちの資料・情報をもとにその整理作業を予定より前倒しして進めた。これによって、研究全体の遅れは最小限に抑えることができたと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度前半は入手済み、及びインターネット等で新たに収集した資料をもとにした、情報整理および分類作業をさらに推し進める。並行して、第一に、研究代表者の安倍による第一世代から第二世代への継承パターンに関する過去の研究を、そのパターンの妥当性を含めて再検討する。その上で、第三、第四世代への継承パターンについて、一定の仮説を構築する。第二に、財閥継承のメカニズムをより深く理解するために、研究分担者の柳町教授を中心に、1~2つの財閥に絞った事例研究も更に進める(現段階ではサムスングループを予定)。第三に、研究分担者の遠藤教授を中心に、政府の政策が継承作業に与える影響について、独占禁止法の改正を中心に検討する。 渡航制限の緩和やワクチン接種の進行など、状況が許せば年度後半には韓国での現地調査をおこない、資料収集と現地研究者との意見交換を行う。なお、今年度も現地調査が実施できない場合でも、オンラインでの意見交換をおこなえるように準備を進める。ここでの対話に備えて、近年の日本のファミリービジネスにおける継承パターンに関する研究サーベイも並行して進める。
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Causes of Carryover |
2020年度は予定していた韓国での現地調査を行えなかったこと、文献サーベイやデータ整理はすでに入手済みの資料やインターネットで入手可能な情報を使用しておこなったため、支出をおこなわなかった。2021年度は渡航が可能になれば、韓国での調査を拡充して行うととする。また、すでに入手済みの資料による作業は一定程度進展しているため、2021年度は新たな資料やデータ購入を年度前半から積極的に進めることを計画している。
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Research Products
(4 results)