2020 Fiscal Year Research-status Report
登山道のオーバー・アンダーユースを発生させる観光行動のメカニズムに関する研究
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20K12401
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
井口 梓 愛媛大学, 社会共創学部, 准教授 (50552098)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 登山 / 登山者 / 観光行動 / オーバーユース / 登山道 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度予定していた近畿百名山に関する現地調査、石鎚山系を除く関係者への聞き取り調査、及び登山客への対面調査はコロナの影響で実施することができなかった。実施年度を一部変更し、登山とSNSに関する調査、大山・石鎚山系の事故データの収集及び分析、登山に対する危機意識とKYTに関する実証調査を実施した。大山では2012年度から2020年度までの遭難・事故発生データを収集した。大山では、9年間において事故数143件、遭難者数161人が発生しており、60歳代以上が38%であり、中高年・高齢の男性登山者の割合が高い。発生件数は15件前後で横ばいの状況が続いているが、近年、高齢者は減少傾向にあり、若年層が占める割合が高くなりつつある。事故発生場所は、大山夏山登山道が42%を占めている。続いて大山山頂、大休峠、元谷登山道で発生しており、その多くは、3月、5月及び7月~9月に集中し、登山道での転倒(26%)、滑落(17%)、体調不良(15%)、道迷い(12%)が要因である。道迷い事例の多くは、単独登山で下山中に発生しており、装備不足や体力低下で道迷う事例も散見された。一方、石鎚山系では、2014年度から2019年度までの同様の遭難・事故発生データを収集し、発生場所の座標データがあるため地図化して分析中である。危機意識に関する調査は、20歳代50名を対象に対面で実施した。登山経験や登山スキル、SNS等の情報接触状況、登山に対するイメージ(共起ネットワーク分析)、登山整備の所有状況等を踏まえたうえで、石鎚山(1900m級登山)での登山を想定した危機意識、登山計画や事前情報の収集について調査した。また、登山の危機予知を検証するために、先行研究と警察庁による山岳遭難態様の分類にもとづいて登山道写真を示し、発生しうる登山事故を自由記述する調査を実施した。本成果は、今年度中に論文として公開予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度予定していた近畿百名山に関する現地調査、石鎚山系を除く関係者への聞き取り調査、及び登山客への対面調査はコロナの影響(愛媛県外に出張できず)実施することができなかった。実施年度を一部変更し、登山とSNSに関する調査、大山・石鎚山系の事故データの収集及び分析、登山に対する危機意識とKYTに関する実証調査を実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
現地調査が可能になれば、1年目に実施できなかった近畿7名山での山岳関係者への聞き取り調査、及び資料収集を実施する。また上記対象事例の登山道の実態調査は、ウェアラブルカメラを用いた撮影を行い分析を実施する。当該年度(2年目)に予定していた登山者へのヒアリング調査は、可能となれば近隣の石鎚山系・剣山系から優先的に実施し、登山者の現地観察、及び現地配布・郵送対応の調査を実施する予定である。危機意識関して、石鎚山系の警察署・消防署・安全登山分科会による危険個所の現地調査も予定しており、可能となれば調査を実施する。
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Causes of Carryover |
今年度予定していた近畿圏の百名山に関する現地調査、石鎚山系を除く関係者への聞き取り調査、及び登山客への対面調査はコロナの影響で出張することができなかったこと、また観光客の調査を現地から実施不可の判断が出たため、一切実施することができなかった。現地での非対面、短期間での調査を実施が現状ではやむをえないため、複数調査員の雇用や現地配布・郵送返送を検討している。
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