2020 Fiscal Year Research-status Report
奈良のシカを中心とした野生生物の観光資源化に関する研究
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20K12404
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Research Institution | Nara Prefectual University |
Principal Investigator |
水谷 知生 奈良県立大学, 地域創造学部, 教授 (40781555)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平 侑子 奈良県立大学, 地域創造学部, 研究員 (00866882)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 野生動物の観光資源化 / 奈良の鹿 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,餌付けなどによる野生動物と人との近接関係を観光資源化することについて,その歴史,背景と課題を明らかにすることを目的としている。研究対象としては,近世から現代に至るまで,シカと人との関わりが観光資源として確立してきた奈良の鹿をとりあげ,また,人と鹿とが近接関係を持つ宮島,金華山などの例と比較することで,奈良の鹿の観光資源化の特徴を明らかにしている。 本研究では,(1) 来訪者の視点から近世以降の奈良のシカの観光対象化の過程の解明,(2) 奈良の人の視点から奈良のシカの観光対象化の過程の解明,(3) 宮島・金華山におけるシカと人との関係性の経過の解明の3側面から研究を進めている。2020年度の研究実績は,(1)については,近世の道中日記で奈良への来訪者によって記述された奈良の鹿について整理を行い,明治大正期に奈良を訪れた者による来訪者の記録の収集をしている。具体的には外国人を含めた紀行文を収集し,記述,掲載されているシカに関する情報の整理を行っている。(2)については,近世,近代の奈良に関する旅行案内書を網羅的に収集し,鹿に関する記述を抽出,整理した。奈良の鹿の記述について,近世と明治期以降第二次大戦前までの記述内容の傾向を「近世近代の奈良に関する案内記類にみる鹿」としてまとめている(印刷中)。(3)については,宮島の鹿について人との関係に関する資料の収集を行った。その中で宮島では一時期,奈良の鹿の譲渡を受けたとされ,宮島以外にも奈良の鹿が各地に譲渡された事実があることに注目し,鹿の譲渡と各地での鹿の観光資源化との関連について資料収集を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,(1) 来訪者の視点から近世以降の奈良のシカの観光対象化の過程の解明,(2) 奈良の人の視点から奈良のシカの観光対象化の過程の解明,(3) 宮島・金華山におけるシカと人との関係性の経過の解明の3つの側面から研究を進めている。 (1)については,すでに近世の道中記で記された来訪者の奈良の鹿に対する見方は整理済みである。また,外国人を含めた明治大正期に奈良を訪れた者による紀行文の収集とそこに記述,掲載されているシカに関する情報の整理をおおむね終えており,順調に進展している。 (2)については,近世,近代の奈良に関する旅行案内書を網羅的に収集し,鹿に関する記述を抽出,整理した。奈良の鹿の記述について,近世と明治期以降第二次大戦前までの記述内容の傾向をまとめ,順調に資料収集と整理を進めている。 (3)については,宮島の鹿について現地での資料収集を行った。その関連で,大正期と戦後に奈良の鹿が各地に譲渡されたことに注目し,資料収集を進めている。奈良の鹿の観光資源化がその他の地域での鹿の観光利用に結びついている点について,研究を進展させている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は,(1) 来訪者の視点から近世以降の奈良のシカの観光対象化の過程の解明,(2) 奈良の人の視点から奈良のシカの観光対象化の過程の解明,(3) 宮島・金華山におけるシカと人との関係性の経過の解明,の3つの側面から進めている。 このうち,(1)については,近代の紀行文の記述から,奈良の鹿の観光資源化の経過を明らかにする。特に,日本人と外国人の奈良の鹿の捉え方の違いに注目し,観光資源としてのポテンシャルについて検討を進める。 (2)については,観光資源としての奈良の鹿について,奈良からの情報発信と奈良の外部からの情報発信の違いがあるのか,その相違の背景にあるものは何かを明らかにすることを計画している。 (3)については,2020年度の研究において明らかとなった,大正期,戦後に行われた奈良の鹿の「分譲」について,分譲する側の背景と譲渡を受ける側の目的について,事例を収集し,観光資源としての鹿飼養の位置付けを明らかにすることを計画している。
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Causes of Carryover |
本年度は,資料収集先である各地の図書館や資料館の休館時期が多く,十分な現地調査を行うことができなかったため,次年度使用額が生じている。 次年度は,本年度調査ができなかった図書館等での資料調査に加え。本年度調査で明らかになった奈良の鹿が譲渡された弥彦神社(新潟),三島神社(静岡)等各地の現地調査を行う必要があり,次年度請求額とあわせ執行する計画としている。
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